ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「眺めのいい部屋」 時を経ても色褪せない美しさ

A ROOM WITH A VIEW01

監督:ジェイムズ・アイヴォリー
製作:イスマイル・マーチャント
原作:E・M・フォスター
脚本:ルース・プラヴァー・ジャブヴァーラ
撮影:トニー・ピアース=ロバーツ
音楽:リチャード・ロビンズ
編集:ハンフリー・ディクソン
(1986年 イギリス)

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
20世紀初頭、付添い人で従兄弟のシャーロット(マギー・スミス)と共にフィレンツェを訪れた
中産階級の令嬢ルーシー(ヘレナ・ボナム=カーター)だったが、
ペンションの部屋は予約時の約束と違い、窓からアルノ河の景色も見えない有様だった。
食事の席でシャーロットがその不満を話していると、同じテーブルのエマソン(デンホルム・エリオット)と
息子のジョージ(ジュリアン・サンズ)が、自分達の眺めのいい部屋との交換を申し出てくれ…。
眺めのいい部屋 HDニューマスター版 [Blu-ray]

TOHOシネマズで開催されている「午前十時の映画祭」
公式サイト:http://asa10.eiga.com/2011/
実は今まで劇場で見た事の無い「眺めのいい部屋」でしたので、いやぁ〜ほんと嬉しかった。
(ナンバでは、1月1日から「バベットの晩餐会」が上映されます。これも大好き!な映画)

J.アイヴォリー監督作品で一番好きなのは今作品、次に「ハワーズ・エンド」(1992)、
その次がカズオ・イシグロ原作の「日の名残り」(1993)でしょうか。
「モーリス」(1987)も含めE.M.フォスター原作のものは、とてもこの監督と相性がいいですよね。

眺めのいい部屋 (ちくま文庫)眺めのいい部屋 (ちくま文庫)
(2001/09)
エドワード・モーガン フォースター

商品詳細を見る
オープニングクレジットで流れるプッチーニの“私のお父さん(O mio babbino caro)”を聴くと
いつも目頭が熱くなってしまいます。
これから始まる素晴らしい時間の予感に鳥肌がたつ、そんな感覚が毎回訪れる映画です。

この時代を再現した衣装や美術等の素晴らしさは今さら言うまでもありませんが、
色鮮やかではなくワントーン落としたような色彩バランス等も日本人にすんなりと
馴染む感覚なのではないでしょうか。
それは、紫色の花をつけたグランドカバーの傍らに落ちた赤い表紙の本とそれを拾う
ルーシーのドレスとの調和、褪せたような草原を掻き分け歩く彼女の白いドレス等からも
感じられます。

また大きな画面で見ると、サンタ・クローチェ教会やシニョリーア広場はより印象的です。
シニョリーア広場で殺人が起きるシーンは迫力があり、
その後アルノ川を望む橋の上でルーシーとジョージが語り合うシーンも
この時に訪れた二人の変化を、今まで以上に感じさせてくれるものでした。

ルーシーの婚約者シシル(セシル)役のダニエル・デイ=ルイス、この人を見るといつも、
長沢節先生が「セツ・シネマセミナー」でべた褒めやった事を思い出します。
ディテールに至るまでスキが無い。時にそれが嫌味に見える時もあるんですが。

ルーシーがシシルと初めて交わす、ぶざまなキスシーン!
ここはルーシーとジョージとの間にある何かを再確認させられる重要なシーンで
ダニエル・デイ=ルイス上手いなぁ〜と思います。
A ROOM WITH A VIEW02

“プアー・シャーロット”のマギー・スミスとダニエル・デイ=ルイス、
この二人無くして、この映画は成立しないですね。

この映画を見るといつも思ってしまうのは、「モーリス」はジェイムズ・ウィルビィじゃなく
ジュリアン・サンズ版を見てみたかったなぁという事。考えても仕方ないんですけどね。
この時代、特に「トレインスポッティング」(1996年)以前に作られたイギリス映画を
懐かしむ気持ちが私の中には根強くあります。

出演者一人一人にも思い入れがありますが、ルーシーが弾くベートーベンから
彼女の内なる情熱を察するビープ牧師。彼を演じていた、サイモン・キャロウは
最近「バーナビー警部」の比較的新しいエピソードで見かけました。また、
ジュリアン・サンズは、ジェラルディン・マクイーワン版で強引にマープル物に脚色された
「ゼロ時間へ」に出てました。TVドラマで彼等を見かけるとちょっと嬉しくなります。

TOHOシネマズなんばにて鑑賞。

ところで、カズオ・イシグロの小説「わたしを離さないで」“Never Let Me Go”が
映画化されたんですね。今日、トレーラーを観て初めて知りました。(2011年春公開予定)
この本、読みながら辛くてつらくて。。。。けど、どんな映画になったのか気になるし、
キャリー・マリガンやキーラ・ナイトレイも出演していて、楽しみでもあります。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
(2008/08/22)
カズオ・イシグロ

商品詳細を見る