ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

第17回大阪ヨーロッパ映画祭(その1)

第17回大阪ヨーロッパ映画祭
2010年10月30日〜11月23日

※ネタバレ含みます。

「野生の愛」(仮題)
監督・脚本:セヴェリン・コルナムサ
原題:Coeur animal
(2009年 スイス)日本初上映
【ストーリー】
家畜にしかやさしくできない酪農家ポールと彼の態度に苦しむ妻。
住み込みのスペイン人の登場から起こる出来事が彼の生き方を変えていく。
(HPより転記させていただきました)

Coeur animal

舞台はスイス。アルプスのハイジそのものの世界。
ただしこちらはあんなファンタジーじゃなくて、現実感があります。
こういう厳しい自然環境の中では、人間も家畜に助けられて生きているという感じでしょうか。
人間の良き相棒、牧牛犬として働くボーダーコリーの“ズッキ”の動きが可愛い。
ひづめを直している時の牛の目つきも「何してんの〜」って言ってるようで可愛い。

そんな感じでポールと動物との関係はすこぶるよさそうですが、妻に対しては大いに問題があって
というか、犬のように妻を口笛で呼びつけたり、一方的な性の捌け口として妻を扱っていたり。

偏見はいけないと思うんですが、聞くところによると30年前のスイスはかなり男尊女卑的
社会だったとか。にしても、この夫はかなり問題ありますね。人間として全く成熟してません。

対照的な存在としてこの夫婦の前に現れたのは、スペイン人の出稼ぎ労働者。
人生を楽しみたい〜というラテン人気質のせいか、女性に対してあたりが柔らかく警戒心を抱かせません。
スペイン人曰く「女性は特別な存在。母親は神聖な存在」
ポール曰く「神聖なのは父親だ」
母系社会的発想というか、マリア信仰の強いイタリア・スペイン人の考え方と
スイス人の違いもあるのでしょうか。面白いですね。
全く考え方の違うこの男性二人のやりとりも、後半ユーモラスでした。

映画を見終わった後お昼を食べていたら、隣の席にいらしたちょっと年配の方が
この映画の感想を話してはったんで、聞き耳を立ててしまいました。
「昔はみんなあんなんやったよね。映画としては良いけど、今さらあんな話観たくないわぁ」と。

ほぉ〜、そうですか。いろんな見方があって面白いですね。私自身はこの映画結構楽しめました。
実生活でポールみたいな男性とは関わりたくないですが(笑)


「家族との3日間」(仮題)
監督・脚本:マル・コル
原題:Tres dies amb la família
(2009年 スペイン)関西初上映
【ストーリー】
祖父の死をきっかけに、久しぶりに家族のもとに帰ったレア。
3日間続く通夜で、保守的な中流家庭である家族と自分との相違が浮き彫りになる。
レアは家族の嘘っぽい世界を否定しようとするが…。
(HPより転記させていただきました)

família

さっき見たばかりのスイスとは、日の光一つとっても違う。
やっぱりスペインの日差しは明るくて良いな〜。それだけで気分が晴れる感じ。

レアの実家のインテリアも、真っ赤な皮のソファにアニマルプリントのクッションカバー、
壁紙は黄味よりのベージュといったスペインらしい色彩センス。
朝の飲み物はエスプレッソマシーンで作り、いかにも中流家庭という雰囲気です。

いくら経済的に恵まれていて快適な生活をおくっていようが、人間関係にひずみが出るのは
当たり前の話。何故かレアの両親は離婚している事を親戚には隠していて、
彼等が保守的な考えの一族というのがなんとなくわかります。

葬儀の準備段階から葬儀の後の食事会までが描かれていますが、親戚の集まりが
超苦手な私は「3日間もかよっ!」と、他人事ながら思いましたよー。

どうでもいいような細かいことにこだわる人や、やたらとしきりたがる人、嫌味の一つでも
言わないと気がすまない人等、どんな親族の中にもこういう人達はいるもんですよね。

レアとマル、バウといったいとこ同士の関係がサラリとしていながらも
幼い頃の思い出を共有している感じが出ていて良かった。

泣いた日の翌日、レアが念入りに目の下のクマをコンシーラーでカバーしているシーン等、
女性監督らしい演出も。

レアの母のセリフ「私は私なの」。これを言いたくなる気持ちはすごく共感できる。
レアは知らず知らずのうちに、自分の思い描く母親像を要求しているんですよね。
母と娘が逆転してるなぁ、この辺。ありのままに相手を愛する事は意外と難しいかもしれません。


今日は江戸堀の新石原ビル、イシハラホールにて「野生の愛」、
同ホールリハーサルルームにて「家族との3日間」を鑑賞しました。
リハーサルルームでの上映は500円という良心的お値段(イシハラホール鑑賞チケットの提示で300円)
なのですが、パイプイスでは正直ちょっとおしりが痛くなってしまいした。
前の席との間もちょっと狭すぎるかな。

ボランティアの皆様、お世話になりました。