ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

BOX 袴田事件 命とは

boxhakamada

公式サイト

監督・脚本:高橋伴明
企画:忠叡
共同エグセクティブプロデューサー:中島仁/加治潤一
プロデューサー:西健二郎/林淳一郎
アソシエイトプロデューサー:大原盛雄
エグセクティブプロデューサー:後藤正人
脚本:夏井辰徳
音楽:林祐介
撮影:林淳一郎
照明:豊見山明長
録音:福田伸
美術:丸尾知行
VFXスーパーバイザー:立石勝
記録:阿保知香子
編集:菊池純一
監督補:小久保利己
制作担当:榊田茂樹
(2010年 日本)

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
昭和41年、放火された静岡県清水市の味噌工場から、刺殺された一家4人が焼死体で見つかるという
事件が起きる。立松刑事(石橋凌)は元プロボクサーの従業員袴田(新井浩文)に目を付け、
容疑者として逮捕するが物証はとぼしかった。
裁判官として静岡地方裁判所に赴任した熊本(萩原聖人)は、
主任判事としてこの事件を担当することになる。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

「死刑が恐ろしいのではない、恐ろしいと思う心が恐ろしいのだ」

刑事裁判の有罪率は99.9%−この数字はやっぱり驚異的ですよね。
一度自白してしまうと、裁判で自白を撤回したとしても有罪になるという事でしょうか。
推定無罪=「疑わしきは罰せず」は日本ではなかなか実践されてないようです。

昭和41年しかも地方警察での取調べは、おそらく映画に描かれているようなものだったと思われます。
もしも自分が身に覚えの無い嫌疑をかけられたらと、想像するだけで怖いです。
日本では被疑者を勾留できる日数がやたら長そうやし、弁護士を同席させる権利もないし。。。。
私自身は、取り調べの全面可視化を少しでも早く実現して欲しいと思っています。
冤罪は人事ではないです。もちろん、人を裁くという視点でも全く人事ではないテーマでした。

「人を裁くということは、同時に、自分も裁かれるということです」

無罪判決を出した裁判官はその後の出世において不利に扱われる等という話は、
あながち嘘ではないように思えます。裁判所は検察には逆らえないといった印象もあります。

実際に事件で裁判官だった熊本さんは、裁判の翌年に裁判官を退官してはります。
「事件は無罪であるとの確証を得ていたが裁判長の反対で死刑判決を書かざるを得なかった」と
袴田事件の支援者に手紙を書く2007年までの間は荒れた生活を送られていたようで、
中日新聞の記事によると、現在熊本さんは生活保護を受けながら暮らしてはるようです。

だとしても、映画の中の熊本さんは精神的に弱い部分が少々強調されすぎていたような印象も受けました。
先日観たナニワのボクシング映画「ボックス!」と何やらタイトルが似ていてまぎらわしいんですが、
この“BOX”の一言で再び闘う気持ちを取り戻すという設定は悪くないと思います。
“BOX”は刑務所内の独房のことも指しているのかもしれません。

1分あるかないかの場面で國村隼さんが死刑囚を演じてはるんですが、凄味のあるシーンでした。
また、野心家の裁判官役だった保阪尚希さん、悪い顔が上手いですネ。

足利事件で冤罪だった事が明らかになった菅家さんのケースでさえも、
未だに冤罪責任の所在は明らかにされていないと思います。
今年菅家さん無罪が確定した裁判において、裁判長が謝罪した事についても“異例の謝罪”と
報じられているようですが、なんで謝罪することが“異例”になってしまってるんでしょうね。
謝罪する=非を認める=補償する必要が生じる、という事だけでもない気がします。
子供っぽい意見かもしれませんが、間違ってたらあやまるのは当たり前だと思うんですが。

袴田事件についての概要は知っていたものの、その詳細については今回の映画がきっかけで
知る必要がある!知らないといけない事やなぁと思いましたね。
映画とは離れたところで客観的な事実だけをみても、再審の請求を棄却している日本の裁判所は
変なプライドに囚われているだけとしか思えません。日本の司法に正義は無いんでしょうか。
この事件からは、今後も目を離せません。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。