ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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エル・スール

エル・スール [DVD]エル・スール [DVD]
(2000/06/30)
オメロ・アントヌッティソンソレス・アラングーレン

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監督・脚本:ビクトル・エリセ
撮影:ホセ=ルイス・アルカイネ
1983年:スペイン

【ストーリー】
生まれ故郷のアンダルシアを捨てて生きる主人公の父(オメロ・アントヌッティ)の、
南=エル・スールへの断ちがたい想いを、娘の目を通じて描く。
エリセ夫人のアデライダ・ガルシア=モラレスが書いた小説が原作。

静寂。窓の外が白みはじめ、犬が吠える。
室内の暗さと窓の青、そのコントラストと光の入り具合が
フェルメールの絵画を思い起こさせる、美しい瞬間です。

この1シーンだけで、この映画の持つ空気感の様なものが
伝わってきてしみじみしてしまうから不思議。

父親役は、大好きなタヴィアーニ兄弟の作品でお馴染みの
オメロ・アントヌッティ。
この人、いかつい感じがしてなんとなく恐かったんです、私。
いかにも厳しい父!(作品のイメージもあるけど)って感じで。

なもんで、主人公エストレリャと父親の仲睦まじいところも
ほのぼのとした気分では見られないんですよね。
がっ!、成長した主人公と父親の関係において、彼の演じた父親の
なんともせつない寂しさに、完全にヤラレました。
もう、そこには絶対的な父親象なんて全くないんですね。
男はみんな悲しい。。。。

これ、かなり暗い話なのに、最後には希望が残るんですよね。
エストレリャも「ミツバチのささやき」のアナも
その逞しい成長ぶりにすがすがしささえ感じる。
女はみんなたくましい。。。だといいなっ(希望)

私自身、今は失ってしまった何か(かつての自分が持っていた気持ち)を
無意識で探しながら見ていた、後からそんな気がして不思議でした。
懐かしい映画にしばらく浸っていたい気分です。
1970年代後半〜80年代のヨーロッパ映画、もっと再上映して欲しい!
(イレーネ・パパスつながりで次は「エレンディラ」が観たいなぁ)

全体的に暗いトーンの中、なんともしっとりとした美しい映像の数々。
映像が何かを語りかけてくる、静寂がここちいい映画です。
これって、結局私の好みなんですね。( ̄▽ ̄;A

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。

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