ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

今朝の秋

NHKアーカイブスにて、ドラマスペシャル「今朝の秋」を観ました。
(1987年/90分)

【物語のはじまり】
蓼科で一人隠居生活を送る父(笠智衆)は、東京の一人息子(杉浦直樹)が
癌に冒され余命いくばくもないことを知らされ上京するが、
そこで二十年前に別れた妻(杉村春子)と再開する。

山田太一作のこのドラマ、
笠智衆杉村春子杉浦直樹、倍賞美津子、加藤嘉樹木希林
キャスティングが豪華ですぅ。

特に加藤嘉さんは、ドラマ収録の翌年に亡くなったそうで
貴重なお姿を拝見しました。
笠智衆さんと加藤嘉さんが、縁側ですいかを食べている場面、
私にとっては、すごくうれしい宝物のようなシーンでした。

加藤嘉さんといえば、ダムの下に沈む村を描いた「ふるさと」という
映画をかつて見に行った記憶があります。
若い頃の私には見えなかったいろんな事が、今なら判るかもしれないと思い
もう一度観たい映画の一つでもあります。

東京物語」では笠智衆さんの長女役だった杉村春子さんが、
ドラマでは別れた妻役なんですが、この二人の掛け合いがいいんです。
暗いテーマのドラマの中で、一種ユーモラスなシーンになっていて。

また、傍役として欠かせない樹木希林さんが、重苦しい空気の中で
息抜させてくれるような存在で、キラリと光っていました。

この頃(昭和期)のNHK制作ドラマは、このように優れた作品が
結構あったように記憶しています。
ミヤコ蝶々さん主演『極楽家族』や、連続ドラマでは吉永小百合さん主演『夢千代日記』、
桃井かおりさん主演『花へんろ・風の昭和日記』等々。

アイドルだからとか、売れてるからという理由だけで主役にしない、
傍役にまでちゃんとした演技のできる役者を配役する。
真摯にドラマを造っている感じが好きです。