ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「トム・オブ・フィンランド」〜今いる場所だけが世界じゃない〜

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公式サイト:http://www.magichour.co.jp/tomoffinland/

監督:ドメ・カルコスキ
脚本:アレクシ・バルディ
撮影:ラッセ・フランク
116分/2017年/フィンランド・スウェーデン・デンマーク・ドイツ・アメリカ
原題:Tom of Finland

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
同性愛が厳しく罰せられた第二次世界大戦後のフィンランド。帰還兵のトウコ・ラークソネンは、昼間は広告会社で働き、夜は鍵のかかかった自室で己の欲望をドローイングとして表現していた。
(公式サイトより転記させていただきました)


情熱溢れる人たちが登場する、静かな映画
フィンランドからLAへ、その対比が面白い


トウコは戦争で受けた心の傷をひきずりながら、自分が殺したロシア兵を一人のキャラクターとして昇華させていきます

が、闇にまぎれて相手を探す夜の森は寒々しく、抑圧され本来の自分を隠した生活からはウツウツとした暗さが。

反面フィンランドの夏は柔らかな日差しが美しく、このパートは少しもどかしさを感じるようなリズムで淡々と描かれます


一方、LAの映像はスコーンと抜けた青空とプールの水しぶきが眩しい!
「開放感」「自由」という文字が頭に浮かびます

彼の絵がいかに多くの人に影響を与えたか、そんな空気感が伝わってきます
70年代のゲイカルチャーは、こうやって生まれていったんだなぁ

内から湧き出てくるものを描いた絵の数々は、最初はあくまでも個人的なモノだったんでしょうね。
それが遠く離れたアメリカで大勢の人の共感を得て支持される、その時の驚きと感動はいかばかりか!

これを見て、当時不思議に思ってたヴィレッジ・ピープルのコスプレも納得
「マッチョ、マッチョ、マーン♪」というゲイ色を前面に出した曲には、少なからずカルチャーショックを受けたけれど

 

そんなアメリカでも、80年代HIVの大流行と共にゲイに対するバッシングがひどくなっていきます

長い間抑圧されていた同性愛者たちにとって、不特定多数と活発に性交渉を持つ場ができた事は、流行の要因の一つと言えるかもしれません
それもこれも今だから言える事であって、当時は治療できないこのウイルスは未知のモノだったのです
ゲイであってもなくても、欲望に流されず安全な性交渉を!という事につきますね


シネ・リーブル梅田 にて鑑賞