公式サイト:http://unitedpeople.jp/nadia/
監督:アルベール・デュポンテル
監督: アレクサンドリア・ボンバッハ
配給:ユナイテッドピープル
原題:On Her Shoulders
95分/ドキュメンタリー/2018年/アメリカ
【この映画について】
ISIS(イスラム国)による虐殺と性奴隷から逃れた23歳のヤジディ教徒、ナディア・ムラドさんを追ったドキュメンタリー
このドキュメンタリーを見て心ゆさぶられない人は、たぶんいないと思う。
ナディア・ムラドは2018年のノーベル平和賞受賞者であり、国連の親善大使です。
この映画はそうなる以前の彼女と、彼女をサポートする人々の活動を追うと同時に、その素顔にも迫っています。
「普通の村娘」でいたかったナディア、その細い肩にかかる重責に時にくじけそうになりながら、同胞たちの窮状を訴える彼女の姿に、何度も胸が熱くなります。
先日、2014年ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんの初来日の様子を目にしたばかりですが、ものすごく対照的。
マララさんは故郷にいる時から自分の意見をブログで発信したりと、元々問題意識の高い人だと推測されます。
一方のナディアは、イラク北部の小さく静かなコチョ村で普通に暮らし、ISISの侵略以前は「世界で日々起こる争いや殺戮について、何も知りませんでした」と語っています。
そして、自分は活動家ではなく「難民」の一人だと。
映像を通して見る彼女の瞳には、常に悲しみと絶望感がやどっています。
時折不安にさいなまれ、老女のように疲れた表情をみせることも。
心に負った深い傷をさらけだすような体験(自分に起きた事を語る)を繰り返し行わなければならない、そんな状況から彼女が解放されるのはいつなんでしょうか。
今もISISに捕らえられた子どもや女性をはじめ、世界で絶望的な状況にある人達の事を思う時、その胸は張り裂けそうになっていることでしょう。
一方、ナディアの表情から色々なモノが伝わってくるだけに、感傷的な音楽を使う必要はないなーと思ってしまいました。
「世界に国境はない。あるのは人道だけ」
彼女が語るそんな世界の実現の為に自分には何ができるのか、そこから色々考えさせられます。
一人一人の思いはあっても、国際社会が具体的に動かない限り道は開けない。
そういう意味ではストレスを感じる映画ではあります。
ところで、ギリシャでルイス氏が何度も食卓のグラスを倒すのにちょっと笑ってしまいました。
こういうチャーミングな人が出てくると、人間もそう捨てたものじゃないとホッとします。
そして、ナディアをサポートするムラド氏の優しさにもジンとするのです。
THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―
- 作者: ナディア・ムラド,吉井智津
- 出版社/メーカー: 東洋館出版社
- 発売日: 2018/11/30
- メディア: 単行本
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辛いけれど、読みたい本です。
テアトル梅田にて鑑賞