ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「たかが世界の終わり」〜やっぱりヒリヒリする〜

f:id:YURURI:20170219170804j:plain

公式サイト:http://gaga.ne.jp/sekainoowari-xdolan/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本・編集・製作:グザヴィエ・ドラン
原作:ジャン=リュック・ラガルス「まさに世界の終わり」
音楽:ガブリエル・ヤレド
(2016年 カナダ/フランス制作 99分)
原題:Juste La Fin Du Monde

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷する人気作家のルイ(ギャスパー・ウリエル)
母のマルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好きだった料理を用意し、幼ない頃に別れた兄を覚えていない妹のシュザンヌ(レア・セドゥ)は慣れないオシャレをして待っていた
浮足立つ二人と違って、素っ気なく迎える兄のアントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)、彼の妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)はルイとは初対面だ
(公式サイトより転載させていただきました)

戯曲が原作なだけあって、ほとんどが「家」という空間で展開する、舞台劇のような映画です

これまでも、家族・親子の関係性を描いてきたドラン監督
傷つき傷つけ合いながらも、互いに愛を求める心理がビシバシ感じられるドラン作品は、見ていて心がヒリヒリします

今作もヒリヒリはしましたが、主人公ルイの一歩退いたような態度もあってか、最後まで乾いた感触のようなモノがつきまといました
「マイ・マザー」(2009)や前作「Mommy/マミー」のような濃密な人間関係も、時折感じられるユーモアも、ここでは見られません

母・兄・兄嫁・妹それぞれの心理は描かれていますが、なんとなく分散してしまった印象なのかなー
舞台劇としてはきっと面白い作品なんだろう、という想像はつきます
個人的にはルイに対して好感も共感ももてないところが、この映画の苦しいところでした

一つの場所で起こった何時間かの出来事、こうなると会話が全てのような気もしますが、ルイにはほとんどセリフがない
やっとこさ自分から話した(車という密室の中)と思えば、相手に何を伝えたいのかわからない、自分本位な会話なのです
それに対する兄の反応も極端だけど、その気持ちはわからなくもないですね

ルイが実家に帰る目的は冒頭に彼自身の口から語られていますが、本当のところはどうだったんでしょう
セピア色で描かれる幼少期のシーンや、かつての自分の部屋で昔を振り返るシーンから、また、彼が「昔住んでいた家を見たい」と言っていたところからも、自分自身の過去を振り返り心に刻んでおきたいという願望が強く感じられます
これからも生き続けていく彼の家族との関係性に自分なりのけじめをつける、その点についてはどの程度考えていたのか、推し量れなかったのです

自らの死を迎える主人公といえば、オゾン監督の「ぼくを葬る」(2005)が思い出されます
この映画は主人公ロマンが自分の「死」と向き合う姿を描いているので、今作とは視点が全く違うとはわかっているのですが

こちらは、ロマンが仲違いしていた姉にちゃんと自分の気持ちを伝え、愛するものを被写体として残す行為などにシンミリし、けっこうエゴイストな主人公であるにもかかわらず、心寄り添える作品になっているのです

ぼくを葬る [DVD]

ぼくを葬る [DVD]

 

奇麗なラストは悪くいえばリアリティがなく、荒唐無稽な設定と感じられるところもあるけれど、そこから今ある世界の美しさが感じられる、こういうのが良い映画なんじゃないかな〜と、今作とついつい比べてしまう自分がいました
そういえば、ロマン役のメルヴィル・プポーは、ドランの「わたしはロランス」(2012)でも主役でしたね

話が横道にそれたので戻します

ちゃんと自分の「死」と向き合った(それとも向き合っていないのか?)主人公が、自分から何か行動を起こさなかった(それこそがあえての彼の選択だとしても)、それがカタルシスを得ることができない一番の理由なのかもしれません
お芝居という点では、見応えのある作品ですが
とにかく、大物揃いのキャスティングですし〜
特に、兄役のヴァンサン・カッセルの惨めさといったら(笑)
被害者意識の塊のようなキャラクターになりきってました

最後にひとつ引っかかったのは、今回の選曲
洗練されてない家族とはいえ。。。。
マイアヒ〜♪って、いくらなんでも曲がダサすぎでしょっ!(笑)

テアトル梅田にて鑑賞


これまでのドラン監督作品で、一番好きなのはこれ

Mommy/マミー [DVD]

Mommy/マミー [DVD]