ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「未来を花束にして」 〜女性参政権運動を、片側から描く〜

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公式サイト:http://mirai-hanataba.com/

監督:サラ・ガヴロン
脚本:アビ・モーガン
製作:フェイ・ウォード / アリソン・オーウェン
撮影監督:エドゥアルド・グラウ
編集:バーニー・ピリング
音楽:アレクサンドル・デスプラ
キャスティング:フィオナ・ウィアー
美術:アリス・ノーミントン
衣装:ジェーン・ペトリ
ヘア&メイクアップデザイナー:シアン・グリッグ
(2015年 イギリス制作 106分)
原題:SUFFRAGETTE

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
1912年、ロンドン。劣悪な環境の洗濯工場で働くモード(キャリー・マリガン)は、同じ職場の夫サニー(ベン・ウィショー)と幼い息子ジョージの3人で暮らしている。
ある日、洗濯物を届ける途中でモードが洋品店のショーウィンドウをのぞき込んでいると、いきなりガラスに石が投げ込まれる。
女性参政権運動を展開するWSPU(女性社会政治同盟)の"行動"の現場にぶつかったのだ。それが彼女と"サフラジェット"との出会いだった。


少し硬いテーマだけど、見た人同士で会話が弾みそうな映画
キャリー・マリガンはやっぱり可愛いし、アイルランドやイギリスの俳優陣の演技は、見応えあります
そんな中、ほんの少しだけ登場のメリル・ストリープがデカデカとポスターに(笑)

実在した婦人参政権活動家エメリン・パンクハースト
映画では、彼女が率いたグループは戦闘的行為もいとわなかったように描かれています。

そんな「サフラジェット」と目指すところは同じであっても袂を分かつ事になった穏健派の「サフラジスト」(Suffragist)、こちら側については映画では描かれていませんでした
平和的な手段により女性参政権運動をしていた人達にしてみれば、サフラジェットの過激な行動はある点では迷惑だったかもしれない。。。などと想像してしまいます
できれば、両方の視点から描かれていればと思いますが、映画としては焦点がぼやけてしまうかもしれませんね

競馬場で国王ジョージ5世に直訴しようとして命を落としたエミリー・ディヴィッドソン(ナタリー・プレス)も実在する人物のようです
彼女の行動そのものよりも、投げ出された騎手と馬のその後が気になってしまいました
(どうやら騎手は怪我で済み馬は無事だったようです。真偽は確かではありませんが、その後騎手が自殺したという情報も見かけました)

映画の冒頭で、パンクハースト達が長年の運動で成果をあげられずしびれを切らして戦闘的手段に訴えた、とありましたが
デモでの逮捕の後の不当な扱いや、その他の理不尽な事の積み重ねなど私には想像できない理由もあり、方針を転換したのかもしれません
サフラジェットの過激な活動が新聞や雑誌の載る事で、アジテーションを展開するという狙いもあったのでしょうが
それにしても。。。

やはり「暴力」という方法を用いるのは、多くの人の共感も得られないし正しい事だとは思えないのです
今の時代だからこそ、そこは譲れない気がします

とはいえ、これは映画ですから正しいかどうかは問題じゃなく、登場人物に共感できるかどうかがキモなわけです

主人公のモードは架空の人物で、日々の生活に追われるワーキングクラスの女性です
最初はサフラジェットの活動に眉をひそめていた彼女は、次第にこのグループに傾倒していくのですが、、、

うーん、ちょっと納得できなかったなぁ

当時、サフラジェットだった労働者階級の女性達にはそれなりの切迫した理由があったはずです
想像でしかないのですが、彼女達の夫は稼ぎもなく頼りなく思いやりもない、そんな存在だったのではないでしょうか

モードの夫は、最終的には全く頼りにならないヤツでしたが(子供をあんな風に扱うとは)、働く妻をいたわって子供の面倒を見たり食事を作ったりしていました
政治活動に関わる前の夫婦中は良いように思えます

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職場の上司(セクハラ!)や社会環境は最悪ですが、ささやかな幸せを棄ててまで過激な運動に身を投じる理由が、いまひとつピンときませんでした
夫の言う事は絶対!という時代で、口ごたえできない状況だとも思えますが「もう関わらない」と約束したとたんに裏切るのはまずいよねぇ

一方、モードを参政権運動に誘ったバイオレット(アンヌ=マリー・ダフ)は、夫の暴力に苦しみ、ぼろぼろの状態で活動しています
そんな彼女も新しい命を宿し、子供を守らなければと過激な運動からは一歩退く事を決意します
こちらのエピソードの方がリアルで共感できます、ハイ

いずれにせよ、この時代を必死で闘った人達の恩恵を、今の私達が受けている事を思い出させてくれる映画です
昔に比べると改善されたとはいえ、今も虐げられ権利を保障されない人を生み出す要因となる日本の法制度、そんな事を考えフツフツと怒りがこみあげてしまう私は、思い切りネガティブ思考かもしれません

大阪ステーションシティシネマにて鑑賞

 

 【キャリー・マリガン出演作品】


 

 

 

【ベン・ウィショー出演作品】