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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ターナー、光に愛を求めて」 〜19世紀の英国にタイムスリップ〜

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公式サイト:http://www.cetera.co.jp/turner/
※音声が出ますのでご注意ください

監督:マイク・リー
撮影:ディック・ポープ
美術:スージー・デイヴィス
衣装:ジャクリーン・デュラン
音楽:ゲイリー・ヤーション
編集:ジョン・グレゴリー
ヘアメイク:クリスティン・ブランデル
(2014年 イギリス/フランス/ドイツ制作 150分)
原題:Mr. Turner

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
《戦艦テメレール号》など数々の傑作を残した、ロマン主義の巨匠J・M・W・ターナー。
若くして名声を得ながら、時には批判や嘲笑を浴びても、自ら嵐に飛び込み新たな表現を模索し続けた天才画家。
名画創作の影で、なぜか名前と身分を偽って意外な場所に出没するなど、旅を愛した画家の素顔は謎に包まれていた。
(公式サイトより転記させていただきました)

史上最年少でロイヤル・アカデミーの正会員となった画家、ターナーの晩年が描かれています。

ターナーの作品は特に好きなわけでもないし、映画の中の彼にこれといって共感もしませんでした。
むしろ作品の魅力は、この時代のロイヤル・アカデミーの様子をはじめ画家&パトロンの人間関係や、庶民の暮らし、ターナーが関心を示した自然科学や写真などといったものから、時代の空気感のようなものが感じられる所だと思います。

こういう映画、大好きです。

アカデミーの展覧会で、コンスタブル(James Fleet)の隣に展示された絵に赤色の筆を加えたエピソードは有名なようです。
個人的にはターナーよりも、コンスタブル(ターナーと同じ時代の風景画家)の牧歌的な風景画が好きです。

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ジョン・コンスタブル 「干し草車(The Hay Wain)」

ロンドン、コヴェント・ガーデンの理髪店を営む家に生まれたターナーは、労働者階級出身の都会っ子。
対して、サフォーク州の田舎、裕福な農家に生まれたコンスタブル。
同じ風景画家といっても二人の絵は対照的だと思います。
描く対象物やその画風が時代によって異なるターナーに比べ、コンスタブルは生涯を通じて故郷のありのままの姿を描き続けています。
ありのままとはいえ、コンスタブルの感性というフィルターを通し、自らの心象をも重ね合わせて描いている印象です。

話が脱線してしまいました。

ターナーを称賛した若き日のジョン・ラスキン(Joshua McGuire)も登場しますが、生意気な空気の読めないお坊ちゃんとして描かれていて、笑えます。
それに対するターナーの反応も含め、ここでの彼の人物像は小さな事に動じない、マイペースな自由人という感じです。
演じるティモシー・スポールの個性も含め、このキャラクターに可愛げを感じられる人は、より映画が面白くなると思います。
ただ、彼の女性や子供に対する態度、その粗野な雰囲気から嫌悪感を感じる人もいるかもしれません。
(私のようにティモシー・スポール好きの人なら前者だと思いますが)

生涯を通じてターナーと密な関係に合った父親ウィリアム・ターナー(ポール・ジェッソン)が、いかにも如才ない商売人といった感じで、面白いですね。
肉屋で買った豚の顔そりをしていたショットが、個人的にはツボでしたけど。
ギャラリーに来たお客を一旦暗くした控えの間で待たせておいて、次に絵を展示した明るい部屋へ通すという方法は、絵の光を効果的に見せる工夫なんでしょうか?
とにかくやり手パパという感じで、ターナーが父親の死に衝撃を受けたのはもちろん、私も軽くショックを受けました。

強い絆で結ばれたターナー親子を見守るメイド、ハンナ(ドロシー・アトキンソン)は、ターナーのかつての愛人(娘二人を連れて文句を言いに来ていた婦人)の姪ということ。
ハンナは、いつか家族の一員に加わりたかったんでしょうね。
彼女のエピソードはなかなかせつないです。

海辺の町マーゲイトで、宿屋の二階にスケッチ向きの部屋を見つけたターナー。
この宿屋の前でまったりしているMr.ブースを演じるのは、カール・ジョンソン(Karl Johnson)さんですね。
この人の演じる可愛いお爺ちゃんに、なんだか萌えてしまう私です。
女将さんソフィア(マリオン・ベイリー)の気だての良さといい、こんな宿なら私もターナーのように常連になってみたいですね。

こういった庶民の生活の一方で、招待された伯爵の屋敷で繰り広げられる画家達の駆け引きなども描かれています。
富める者が芸術を理解し支援しようとする一方で、それを何とか得ようとする画家の中に、経済的に困窮しているヘイドンがいます。
後に彼は自殺してしまうようです。

ターナーのパトロンでもあるこの貴族は、第三代エグルモント伯爵という人。
サセックス州にある屋敷ペットワース・ハウスは、伯爵がコレクションしたターナーの作品とともに一般に公開されているそうです。
イギリス国内に住んでれば、映画をみてからふら〜っと出かけていけるんですけどねぇ。

こんな数々の興味深いエピソードも映画の魅力ですが、一番魅了されたのは、風景画を映像として再現したかのような映像美かもしれません。
冒頭のオランダのシーンから惹き込まれましたよ。

テアトル梅田 にて鑑賞

 

ターナー、光に愛を求めて [DVD]

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