ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「天才スピヴェット」 〜飛び出す絵本〜

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公式サイト:http://spivet.gaga.ne.jp/
※音声が出ますのでご注意ください


監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ
脚本:ギョーム・ローラン
原作:ライフ・ラーセン
撮影:トマス・ハードマイアー
美術:アリーヌ・ボネット
編集:エルヴェ・シュネイ
衣装:マデリーン・フォンテーヌ
(2013年 フランス/カナダ制作 105分)
原題:L'extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
8月のある午後、T・S・スピヴェット(カイル・キャトレット)に、
10歳にして人生を変えることになる、特別な電話がかかってくるー
モンタナ州のパイオニア山地の谷間にある広々とした牧場に、
ポツンと建つ一軒の赤い家、スピヴェットはそこで、
カウボーイの生き方を追求する父テカムセ(カラム・キース・レニー)と
昆虫博士の母クレア(ヘレナ・ボナム=カーター)、そして
アイドルを目指す姉のグレーシー(ニーアム・ウィルソン)と
暮らしている。
(公式サイトより転記させていただきました)

あ〜、楽しいなぁ。
この映画のレビューか何かでみかけたキーワード
「飛び出す絵本」、本当にそんな感じ。

一度目は2D版を見たのですが、やはり3D版も
気になり再び劇場へ。

決して派手な3Dではなくて、草原の奥行きや
広大なアメリカ大陸といった自然の描き方に
心なごむ、そんな印象です。
実験道具、手書きスケッチなどTSの頭の中を
立体化した映像も、面白いですし。

ジュネ監督は、今作でもそのグロテスクな部分は
抑えて(あえていうと虫の標本が出てくるけど)、
可愛いくてたまらん〜アイデア満載の
映画を見せてくれました。

ただ、ストーリーの方は結構シニカルで、
小さい子供に銃を与える父親とか、
子供を餌に一儲けしようと考える大人に対し
批判的な視線が向けられているようです。

底辺に流れるテーマ、本当は愛し合ってるのに
心がすれ違う家族が最後には判り合うというのは
ありがちですが、そう単純な話でもなくて、
裏に皮肉が込められているように感じます。
でも、この昆虫博士の母は良いですね。
「凡庸さは心のカビよ」は、なかなかの名言だし。
ヘレナ・ボナム=カーター、若い頃よりも
年を重ねて断然素敵になってきたと思います。
彼女らしい上品さが、役に活きている感じ。

ジェネ映画の常連ドミニク・ピノン演じる
謎の放浪者(?)や、ブランコに逆さ吊りに
なった少女など、本筋とは関係ないようで
印象に残るエピソードが結構好きです。
程よいファンタジー色も良い感じで、
大好きな一本です。機会があればまた見たい〜

アメリカを舞台にしながらも、決して
ザ・アメリカにはならない味付け。
まるで絵本のような、そして独特な色彩、
どこかで見たような世界だと思ったら、
小さい時に読んでいた絵本“カロリーヌ”
シリーズの雰囲気に似ているのです。

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中でも、カロリーヌが仲間の動物達と
田舎の別荘を手入れしようと奮闘する
この物語は大好きでした。懐かしい ♪

カロリーヌといなかのべっそう (カロリーヌとゆかいな8ひき)

カロリーヌといなかのべっそう (カロリーヌとゆかいな8ひき)

 

このシリーズの作者はフランス人
ピエール・プロブストという方なのですが、
やっぱりフランス的色使いという事で共通
するところがあるのかな。

ところで、映画の原作はこちら

T・S・スピヴェット君 傑作集

T・S・スピヴェット君 傑作集

 

この中のイラストが、映画でも使われていたようですね


シネ・リーブル梅田にて鑑賞(2D、3Dとも)