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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 〜決してみなかった夢〜

映画 あ行

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公式サイト:http://onlylovers.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
(2013年 アメリカ/イギリス/ドイツ制作 123分)
原題:ONLY LOVERS LEFT ALIVE

※ネタバレ含みます

【ストーリー】
吸血鬼のアダム(トム・ヒドルストン)はギターをはじめ
弦楽器なら何でも自在に弾きこなすミュージシャンとして
アンダーグラウンド・ミュージック・シーンで活躍している。
しかしここ近年の自己破滅的な人間たちの振る舞いに
アダムは抑鬱を抱えていた。
そんなとき恋人イヴ(ティルダ・スウィントン)が
デトロイトに住む彼の元を訪れる。
 (公式サイトより転記させていただきました)

前作「リミッツ・オブ・コントロール」の中のセリフ
「素晴らしい映画って、決してみなかった夢みたいなものよ」を
思い出しました。そんな映画。

オープニング、回る星空がレコードの回転に変わり、やがて
イヴが映し出され、それらが溶け込んで一つになるような感覚、
映像のマジックにかかる感じ。映画館でじっくり楽しみたい映画です。

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主人公達は吸血鬼なのですが、“ヴァンパイア映画”という印象は
受けないのです。日光を浴びないように夜しか行動しないとか、
心臓に木の杭を打つと死ぬとか、そういう古典的な部分はちゃんと
踏んでるんですけど。

「ストレンジャー・ザン・パラダイス」から続いている、
“煌びやかでおもしろ可笑しい事なんかとは無縁”というか
アメリカのサクセス・ストーリでよく描かれる
汗と涙の感動ストーリーみたいなモノとはかけ離れた
メジャーではない、むしろマイノリティな世界の話です。

例えば「カリフォルニアの青い空」なんてものを享受して暮らしている
人達と違って、夜の世界でひっそりと暮らしているこの吸血鬼たちは
マイノリティという部分で、それを描いてきた監督自身の姿が
投影されているのかもしれません。

そこに、ジャームッシュの好きな音楽、文学などのカルチャーが
たっぷり織り込まれていて、監督のオタクぶりも伺える映画です。
昨年見た「ジャンゴ 繋がれざる者」は、映画オタクのタランティーノ監督が
マカロニ・ウェスタンを自分の好きなように新しく作ったという感じでした。
そこまで露骨ではないものの、アナログレコードやアンティークギターなど
監督が個人的に好きそうなものが、ここではアダムの生き方を想像させる
小道具として使われています。

デトロイトを案内するアダムが「モータウン歴史博物館」に行く?と
イヴにたずねると、イヴが「私はスタックス派よ」と言っていましたね。
映画「キャデラック・レコード」で「モータウンはアップタウンのもの」
というセリフがありましたが、白人向けにとっつきやすく洗練された曲を
生み出したモータウンではなく、サザン・ソウルを広めたメンフィスの
スタックスレコードの方が好みだとイヴに言わせているのです。

ここは、彼らがたやすいものや見かけがよいものを選ばない
審美眼を持っているという意味で言わせたのでしょうか。
確かにイヴはモノを見極めるというか、だてに何世紀も生きてない
知性と教養と洞察力の持ち主という印象があります。

対照的なのが妹のエヴァ(ミア・ワシコウスカ)。本当に兄弟なのか?と
思うくらい、がさつで知性の感じられない衝動的な生き物という印象。
これは、イヴとエヴァという名前からしても、一人の人間の両面を
描いているのでは?なんて深読みしてしまいます。

夜の世界に生きるアダム達なので、当然夜の映像ばかりなのですが、
暗闇の中に浮かぶデトロイトの廃墟は、虚ろな美しさがありました。
もう一つの舞台、タンジェ(モロッコ)の街も怪しげな夜の魅力に
溢れていて、日の当たらない世界も美しいなーと感じさせます。

それ以上に美しかったのはアダムとイブなんですけどね。
品があってエレガントなイヴの衣装も素敵ですし、
二人の立ち居振る舞いが、とても優雅なのですよね。

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“トムヒ”ことトム・ヒドルストンは、品のある物腰と
ソフトな話し方が好きな俳優さんです。
彼のあの話し方で、もしベネディクト・カンバーバッチの声だったら
もう悶絶してます、間違いなく(笑)

ティルダ姉さんは、アバンギャルドな装いが似合う50代、素敵ですわ♪

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左からジム・ジャームッシュ、ティルダ・ウィンストン、トム・ヒドルストン

優美なアダムとイヴですが、コメディ的要素もあるなぁと思わせたのが
血液アイスキャンデーにかじりつくシーン。
そこでの二人の会話、やりとりも可笑しかったです。
歴史上の人物の名前が冗談のように次々登場しますが、
ここはちょっと具体的な名前を出し過ぎかな〜と、思いました。
3〜4人くらいにとどめて、あとは肖像画やポートレイトで
想像させる方が良かったんじゃないでしょうか。

この映画は出演者も少数でしかも豪華!ジョン・ハートさんや、
ドクターワトソン(笑)役でジェフリー・ライトも出てます。
調達屋のイアンは見覚えある顔だなぁと思ったら、
J・J・エイブラムの劇場版スター・トレックシリーズで
チェコフ役のアントン・イェルチンじゃないですか!
可愛らしいですね〜。そして彼、可哀想でしたね〜。

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映画の中で、アダムに「彼女は本物だ」と言わせた歌声の持ち主は
レバノンのヤスミン・ハムダンさんです。

Yasmine Hamdan - Hal - YouTube

今日、映画館はたくさんの人で賑わっていたけれど、
この映画は(朝早いせいもあると思いますが)私をいれて5人
という寂しい状況でした。何故?
こういう映画は、単館系の映画館で上映した方が人が入るんじゃ
ないかな〜と思ったりします。
大手のシネコンにはあまり行かない方の方が、好みそうな作品ですし。

単館系と言えば、梅田ガーデンシネマが2月いっぱいで閉館しますね。
一番良く利用していた映画館だったのでショックです(涙)
その後は、下の階のシネ・リーブルさんが増床という形で落ち着いたようです。

大阪ステーションシティシネマ にて鑑賞。

 

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