ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「バーニーズ・バージョン ローマと共に」

バーニーズ・バージョン ローマと共に [DVD]

バーニーズ・バージョン ローマと共に [DVD]

監督:リチャード・J・ルイス
脚本:マイケル・コニーヴェス
原作:モーデカイ・リッチラー
製作総指揮:マーク・マセルマン
音楽:パスクァーレ・カタラーノ
(2010年 カナダ製作 134分)
原題:BARNEY'S VERSION

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
真夜中、酔ったバーニー(ポール・ジアマッティ)は、前妻ミリアム(ロザムンド・パイク)に
電話をかけるが、ミリアムの現在の夫ブレア(ブルース・グリーンウッド)に切られてしまう。
翌日、バーで待ち構えていたオハーン刑事(マーク・アディ)から悪態をつかれたバーニーは、
ローマで過ごした若かりし日の事を思い起こしていた。

先週、アンコール上映を見に行く予定だったのですが、
シネ・ヌーヴォXのあのパイプ椅子に134分座って見るのは
ちょっと厳しいなぁと挫折してしまいました。
で、さっそくレンタルDVDを家で鑑賞する事に。

DVDのキャッチコピーには“ロマンティック・コメディ”とありますが、
前半はともかく、最後の方は結構シリアス。
実際、思い出のホテルで再会するバーニーとミリアムのシークエンスには
涙しました。バーニーの財布の中から出てきたメモ。。。。
二人が初めて出逢った時からの日々が、ミリアムの頭の中を駆け巡ったかもしれません。
自分は確かに愛されていたんだなぁと。この後のロザムンドの演技も素晴らしい。

ところで、バーニーはだらしない! 一事が万事という感じで、体型もだらしない。
(ジアマッティさん、ちょっとお腹出過ぎじゃないでしょうか?! 
いや、太り過ぎは健康を害すると思うのでちょっと心配)
その時の感情で行動するというか、流されて生きている感じがどうにも見苦しく思える。
おまけに、夜中に前妻に電話するなんて未練たらしくて、
しょっぱなから、やな男だな〜という印象を植え付けられます。

しかし、惰性で生きているようなバーニーがこれだけはどうしても獲得したい!と思ったのが、
ミリアムとの関係性だったのです。彼女との関係を築くために、離婚を決意します。

さて、離婚を決意したバーニーにとってはなんとも都合の良い出来事が起きるのですが、
この事件が起きなくてもバーニーはちゃんと離婚を切り出せたのかと
ちょっと疑問は残りました。ここで自ら動いて元妻と対峙していたら、
彼の其の後の人生に対する取り組み方も変わっていたのかなぁ?などと
考えをめぐらせるのも楽しいけれど。

ミリアムを深く愛するバーニーですが、その愛は結局のところ“執着”とも言えるモノで、
妻の自立や自主性そして彼女自身の人生を尊重する度量が無い、というのが辛いところです。
そして、妻に依存しすぎているのも痛い。こういうウジウジした役がはまりすぎて、
ジアマッティさん以外の配役は考えられないですね。そう、どこか憎めないところも。

ポール・ジアマッティダスティン・ホフマン以外の主要キャストは、
イギリス人俳優達またはカナダ人俳優で占められていますが、
(ちなみにバーニーの息子役の人はダスティン・ホフマンの息子だそうです)
派手さはなくても実力派揃いのキャスティングが、この映画の魅力の一つになっています。

人生の大事な場面で、不注意から失敗してしまうダメ男バーニーですが、
羨ましかったのは、父親との関係性。愛し愛されながらも距離を置いて見守る
あんな父親は理想です、うん。まぁ、ちょっと素行は悪いんだけど、それもご愛嬌。

カナダにおけるユダヤ人社会が物語前半の舞台となっていますが、
そこのところの事情がよくわからないので、ピン!ときてなくて
もしかして面白さが半減してるかも、、、なんていう不安は若干ありますが、
人生の悲喜こもごもが描かれた、なかなか味わいのある作品だと思います。