ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「クロワッサンで朝食を」 〜生涯現役〜

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公式サイト:http://www.cetera.co.jp/croissant/ 音が出ます!

監督・脚本:イルマル・ラーグ
脚本:アニエス・フォーヴル、リーズ・マシュブフ
撮影:ローラン・ブリュネ
音楽:Dez Mona
衣装:アン・ダンスフォード
美術:パスカル・コンシニ
(2012年 フランス/エストニア/ベルギー製作 95分)
原題:UNE ESTONIENNE A PARIS

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
エストニアで母を看取ったばかりのアンヌ(ライネ・マギ)に、パリでの家政婦の仕事が舞い込む。
悲しみを振り切るように、憧れのパリへ旅立つアンヌ。
しかし、彼女を待ち受けていたのは、高級アパルトマンに独りで暮らす、
毒舌で気難しい老婦人フリーダ(ジャンヌ・モロー)だった。
(公式サイトより転記させていただきました)

パリに憧れる女性が多いのは、日本だけじゃないんですよね、やっぱり。

酔っぱらいの元夫や、めったに帰ってこない子供達。
アンヌのエストニアでの生活は、暗く閉ざされているようです。
ところが、彼女がパリに行くと決まったところから
明るい音楽(懐メロっぽいフレンチ・ポップス)が流れ、
それまでのムードが一変。
アンヌがパリで再出発しようとする気持ちや、憧れの地に来たトキメキが
上手く表現されています。

さて、このアンヌという女性、おそらくエストニアの田舎で暮らしていた
洗練されていない女性という設定なのでしょうが、ちょっと疑問に感じるところも
ありました。
例えばフリーダのアパルトマンに到着した夜、雇い主のステファンから
「今日は遅いから明日挨拶して」と言われたのに、そっとフリーダの寝室に行ったり、
「部屋で靴は脱がなくても良い」と言われても、頑に玄関に靴を置き去りにしたり。

まぁ、こんな事は些細な事なんですが、一番不自然に感じたのは、
フリーダのかつての知り合いを、嘘をついて招いた事です。
これ、ちゃんと根回しして相手に話を通してるのかと思いきや、そうではなくて。
すごい中途半端なおせっかいでした。。。。フリーダで無くても怒ると思います。

それでも、アンヌが持つ穏やかな雰囲気のせいか、
それらも彼女の優しさから出ている行動だからなのか、
パリに出てきたばかりの自分を重ね合わせているのか、
やがてフリーダは彼女を受け入れるのです。

最初は、クロワッサンをスーパーマーケットで買ったりしたいたアンヌも
ちゃんとブーランジェリーでそれらを買うようになりました。
↑このあたりは、物を知らないアンヌの事がよくわかるエピソードです。

それにしても、ステファンは最初から朝食についてアンヌに伝達しとかないと!
それさえも忘れるとは、フリーダの事を積極的には考えてない印象が残ります。
やはり、義務感がつきまとう。。。感じでしょうか。

原題は「パリのエストニア人」ですが、たとえ
異邦人でなくても、老人でなくても、独り身でなくても、
人間というのは皆、孤独になる可能性を抱えて生きています。

アンヌが散策する夜のパリ、エッフェル塔の前で迎える朝、
そこには孤独感と共になんとも言いようの無い美しさがあります。
孤独を知っている人間だけが持つ美しさなのかもしれないなぁと
ふと思いました。

ジャンヌ・モローを見ると、生涯現役で演じてるなぁと嬉しくなります。
今作品では、私物のシャネルを見にまとい、ネックレスもジャジャラと、
プチブルジョワ感が出てました。16区エリアの洒落たアパルトマンがお似合いです。

逆に考えると、彼女はふてぶてしい役しか出来ないという感じもありますが。
優しくて気弱な老人。。。。なんて演じるジャンヌ・モローは想像できない。
やはり、ステファンの股間に手を伸ばし平然としてる、そんなフリーダが素敵です。

梅田ガーデンシネマ にて鑑賞。