ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「三姉妹 〜雲南の子」 〜見る側に委ねる映画〜

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公式サイト:http://moviola.jp/sanshimai/

監督・撮影・編集:ワン・ビン
撮影:ホアン・ウェンハイ、リー・ペイフォン
録音:フー・カン
編集:アダム・カービー
製作:シルヴィー・ファグエ、マオ・ホイ
(2012年 香港/フランス製作 153分)
原題:THREE SISTERS

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
今回、ワン・ビンがカメラを向けたのは、中国で最も貧しいと言われる雲南省の山中の村に暮らす
10歳、6歳、4歳の幼い三姉妹である。驚くべきことに、子供たちの両親は家に不在だ。
母は家を出、父は出稼ぎにいった。近くに伯母や祖父はいるものの、姉妹は自分たちだけで生活している。
(公式サイトより転記させていただきました)

貧しい村で、親と離れて暮らす子供達の生活をとらえたドキュメンタリー。
当然、フィクションのようなおもしろ可笑しいストーリーがある訳でもなく
音楽もなく、最小限の解説が字幕で流れる、そんな映像作品なのですが、
153分、食い入るように見つめていました。

子供達の持つパワー、生命力、そんなものに惹き付けられるのか、
それとも真実の持つ力に惹かれるのか、とにかく目が離せないのです。

三姉妹が着ている服は汚く、靴も穴だらけ、布団もボロボロ。
体を洗っていないらしく、体中にシラミがたかり、食べるものといえば
ふかしたジャガイモ。(←まるでタル・ベーラの「ニーチェの馬」みたい)

同じ村に住む親戚の家で晩ご飯を御馳走になっても、なんだか肩身が狭そう。
長女のインイン10才が妹達の母親変わりをしているのですが、寒いせいなのか
いつも咳をしていて、彼女の健康が気にかかります。

久しぶりに父親が帰ってきても、妹達とは違いインインは甘えることが
できないように見えます。どこか諦めているような醒めた表情も気がかり。
その後、父親と一緒に都会に行った妹達とは違い、結局最後まで着替える事のなかった
インインの服は、黒ずんでました。

彼女が通っている学校の前に、お菓子の行商人が店を広げている場面でも、
他の子が何を買おうか迷ったり選んだりしている中、じっとみつめているだけの
インインの様子がなんとも不憫でした。
そんな彼女も、年が近い友達の男の子と話している時には笑顔も見えて、
唯一楽しそうやったなー。その男の子も同じように貧しそうで、なかなか
苦労しているようです。負の連鎖というか、こういう貧しさから抜け出すのは
難しいのかもしれません。

結局出稼ぎが上手くいかず、田舎に帰ってきた父親は子守りの女性とその子供を
連れて帰ってきます。やんちゃな次女のチェンチェンと、継母変わりのその女性との
関係性が気にかかります。虐められなかったら良いのだけれど。

三女フェンフェンが口ずさんでいたあの歌、
「私のママが一番ステキ♪」というのは、流行歌なのでしょうか。
その内容と現実とのギャップがありすぎて、切ないラストシーンです。

こういう映画が、当の中国本土で上映されないという事がとても残念です。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。