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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「愛について、ある土曜日の面会室」 〜人生いろいろ〜

SUIVRONT.jpg

公式サイト:http://www.bitters.co.jp/ainituite/音が出ます!

監督・脚本:レア・フェネール
脚本:カトリーヌ・パイエ
撮影:ジャン=ルイ・ヴィアラール
編集:ジュリアン・シゴ
録音:ジュリアン・シカール
音楽:リュック・メイヤン
(2009年 フランス 120分)
原題:QU'UN SEUL TIENNE ET LES AUTRES SUIVRONT

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
フランス・マルセイユ――ロール(ポーリン・エチエンヌ)、ステファン(レダ・カテブ)、
ゾラ(ファリダ・ラウアッジ)は、同じ町に暮らしていてもお互いを知らない――――
サッカーに夢中な少女ロール。ある日、初恋の人アレクサンドルが逮捕されてしまうが、
未成年のロールは面会ができず、想いを募らせてゆく・・・。
(公式サイトより転記させていただきました)

登場人物が刑務所の面会室を訪れる理由は、三者三様です。

10代の少女ロールは、暴力をふるって警察に捕まった
ボーイフレンドに会いに行くため。

仕事・私生活、何をやっても上手くいかないステファンは、
自分と瓜二つな受刑者の身代わりになり、多額の報酬を手に入れるため。

そして、自分の息子が何故殺されなければならなかったのか、納得できないゾラは
直接犯人に会って話をするため、面会したいと考えます。

彼らに接点はなく、それぞれの物語がパラレルに描かれます。

刑務所の面会室からは、様々な会話が漏れ聞こえてきて
ここに人生の縮図を見るような気がします。

「独りでたまらなく寂しい」「あなたがいない間どれだけ大変だと思ってるの」
などなど。。。。面会者と待ち受ける受刑者との気持ちの温度差があったり、
同じ面会室の中においても、様々な人間関係があってそれぞれのドラマが
あるのだなぁと感じます。

この若い女性監督のインタビューで、彼女の刑務所でのボランティア経験から、
人々にこういう場所があるのだと認識して欲しかったみたいな事を言ってはった
ような記憶があるのですが、そういう点で監督の思うツボにはまってます、私。

その中にあって、ステファンのエピソードはフィクションの要素を
多く感じさせるというか、映画的です、。
ステファンの事を厳しい一言で言い表すとしたら、
「何事に対しても真剣に向き合ってこなかった“ツケ”が回ってきている」とでもいうか。
そんな人物像なんですが、そのやけっぱちな気持ちもどことなくわかるのです。

罪を犯す勇気はないけれどお金は手にしたいというあの優柔不断さに
さんざんイライラさせられますが、悪い人じゃないだけになんだか感情移入してしまい、
見ていてしんどくなる登場人物です。演じた俳優さんの“負け犬っぷり”が見事でした。

あの後、刑務所で主張しても通らないんじゃないですかねー。
たとえ、調査して別人とわかったとしても、罪には問われますしね。


息子を殺されたゾラのエピソードは、「ジョルダーニ家の人々」で印象的だった
ファリダ・ラウアッジが演じていたせいか、やるせないけどしっとりとした印象を残します。
犯人の姉に近づき機会を狙うゾラですが、この人は何か人に安心感を与えるような
母性を感じさせますね。

面会室でゾラの正体を知って動揺し逃げようとした犯人でしたが、その胸のうちを語るうちに
だんだんと様子が変化してきます。見ている者はここで、被害者と加害者の間にあった
感情のもつれと、被害者の殺された理由が少しだけわかったような気がするのではないでしょうか。

本当の所は誰にもわからないのかもしれなくても、こんな風に、想像できる余地を残しながら
ある程度の道筋をつけるような説明があるのは、映画として親切だと思います。


ロールのエピソード、分別のない少女の愚かな話と言えばそれまでなんですが、
彼女やロシア系のボーイフレンドよりも、彼女に付き添う医者が印象に残ります。
ロールがふとした事で知り合った献血車の医師、公式サイトの出演者の紹介に
載ってないじゃないですか!なんで? はっきり言って彼がいなかったらつまらなかったのに。
ロールがアレクサンドルに夢中になったいきさつも、説得力なかったしなー。


刑務所の前で面会の時間を待つ人々が映し出される、静かで陰鬱な冒頭のシーンですが、
突然その静寂を破るように女性が叫び始めます。
彼女は夫が捕まってどこかへ連れて行かれたと、周りに訴えているよう。

ここで私は「その書類をもってしかるべき所に相談に行くよね、普通に考えると」と
醒めた目で見てしまいました。この部分は、ちょっと大げさな演出に見えてしまうというか。
良い映画なだけに、なんとなく“惜しい”と感じるのです。

ステファンの恋人・エルザ役、ディナーラ・ドルカーロワ
ヴィターリー・カネフスキー監督の映画「動くな、死ね、甦れ! 」に出ていた
あの少女なのですねー。うれしい再会です。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。