ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

年の始めに-2 〜2012年の映画を振り返って〜

おかげさまで、喉の調子もかなり良くなってきて体調もほぼ回復してまいりました。
ありがたい〜。という事で、今日は2012年に劇場で見た映画を振り返ってみようと思います。

昨年は、年初に見た映画「灼熱の魂」が素晴らしく、幸先の良いスタートを切る事ができました。

その後「サラの鍵」「ルルドの泉で」と、立て続けに心に響く映画と出逢う事ができ、
非常に密度の濃い1月でした。

世界の終末を描いた映画3本も印象的でした。
メランコリア」、「生きてるものはいないのか」、中でも「ニーチェの馬」は、
その強烈な印象という点では今年一番の映画かもしれません。
同監督作品「倫敦から来た男(A londoni férfi)」(2007年)では、まだうっすらと
靄がかかったようにしか見えなかった事が、ここでくっきりと輪郭を成したように感じられたのです。
↑まぁ、これって見る側の思い込みなんですけどね。

一年に一本でもそんな映画と出逢えたら幸せです、ほんとうに。

さらに、好きな映画監督の新作もたくさん上映され、嬉しい年でした。
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌの「少年と自転車」、
アキ・カウリスマキの「ル・アーヴルの靴みがき」、
アレクサンダー・ペインの「ファミリー・ツリー」、
ジェームズ・アイヴォリー「最終目的地」など。
今振り返っても、すごいラインナップです。

そして、なんといってもウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」が、
楽しい映画としては抜きん出てました。例えれば、映画館からの帰り道に口笛を吹きたくなるような。
このウキウキ感は、ここ一年に限らずアレン作品の中でもトップに位置する出来だと思います。

また昨年は、以前から気になっていた映画が上映されて、見る機会を与えていただきました。
十三 第七藝術劇場での「ボリス・バルネット傑作選」も面白かったし、
同劇場での「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ」は、すごい吸引力がありました。

九条 シネ・ヌーヴォでの「〜小川紳介監督と小川プロダクション〜」では
念願の「ニッポン国古屋敷村」を見る事ができて、本当に良かった。
都会育ちの私ですら「日本の原風景とはこういうものかもしれない」と思い、
この映像を封印したらだめだ!と本能的に感じさせられるような力のある映画です。

先日、同劇場での「ポーランド映画祭2012」で上映された「サラゴサの写本」は、
その入り組んだ構成にも関わらず物語としての面白さも際立っていて、
芸術性と娯楽性の両方が見事に融合している貴重な映画だと感じました。

昨年気分を盛り上げてくれた、お気に入りの俳優さんの事もあげておこうかと思います。

一昨年上映された「ブルーバレンタイン」は今も印象の残る映画ですが、
その主役の内の一人、ライアン・ゴズリング主演の「ドライヴ」は小気味良い作品で、
彼の相手役にはあのキャリー・マリガンも出演。
そしてそのキャリーが主人公の妹役を好演していたのが(歌も披露してましたっけ)、
マイケル・ファスベンダーの演技が光った「SHAME -シェイム-」。
ファスベンダーは「ジャーン・エア」でお気に入りのミア・ワシコウスカと共演。
素敵な映画で、ちゃんと原作を読むきっかけにもなりましたっけ。

そして今一番お気に入りのイギリス人俳優二人、エディ・レッドメイン
ベネディクト・カンバーバッチ。二人とも育ちの良さと清潔感が大きな魅力です。
「ブルーバレンタイン」のもう一人の主役ミシェル・ウィリアムズ主演の
「マリリン 7日間の恋」で、エディ・レッドメインは重要な役を果たしていました。
一方、ベネディクト・カンバーバッチは「裏切りのサーカス」が昨年公開されましたが、
Steve McQueen(「SHAME -シェイム-」の監督)の最新作「12 Years A Slave」(原題)に
ファスベンダーやブラッド・ピットと共に出演しているので、ちゃんと今年公開される事を願います。
この映画にはチュイテル・エジオフォーポール・ジアマッティさんまで出てるし、
すごく楽しみにしてるんですよー。
こうやってみると、お気に入りの俳優さん達が不思議なほど、その出演作で繫がっています。

繫がっているといえばBBCのドラマ「SHERLOCK」でベネディクトの相棒でもある
マーティン・フリーマンは、今年そして来年も主演作「ホビット」の上映があるという意味でも
注目せざるを得ない人物です。
見る前から予測していた事とはいえ、彼の過去出演作「銀河ヒッチハイク」や
「SHERLOCK」と同じように、“本人は穏やかで地味な人物なのに、周りに巻き込まれて
冒険する事になってしまう”という一見トホホな展開が、ここまで楽しくなるなんて。
彼見たさに「ホビット 思いがけない冒険」を2回見たような気もする。
マーティン、君はやっぱりすごいよ!と声を大にして言いたくなります。

 
最後に、昨年一番印象的だった本を紹介しておきます。
この本、1年前にも読みたい本として紹介済なのですが、予想以上に良かったのでもう一度。

孤独の部屋 (20世紀イギリス小説個性派セレクション)孤独の部屋 (20世紀イギリス小説個性派セレクション)
(2011/04)
パトリック ハミルトン

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人の気持ちを深読みするというか、あれこれ考えすぎる主人公を見ていると、
イギリス人の中にもある“むき出しでない繊細な部分”みたいなものが感じられるよう。
また、これは彼女からみた一方的な人物描写であって、真実はどうなのかわからない、
と疑いながら読むのも面白い体験。この地味さとリアリティがツボにはまったのかも。
好き嫌いが別れそうな本だとは思います。