ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「いとしきエブリデイ」 〜愛おしい風景〜

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公式サイト:http://everyday-cinema.com
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本:マイケル・ウィンターボトム
脚本:ローレンス・コリアット
プロデューサー:メリッサ・バーメンター
音楽:マイケル・ナイマン
(2012年 イギリス制作 90分)
原題:EVERYDAY

※ネタバレ含みます

【ストーリー】
イギリス、ノーフォークの小さな村。まだ夜が明けきらない朝4時。
ステファニー、ロバート、ショーン、カトリーナの4兄妹は、
ママ(シャーリー・ヘンダーソン)に起こされる。
幼い兄妹たちは眠い目をこすりながら、手をひかれて家を出る。
今日は、服役中のパパ(ジョン・シム)に面会に行く日だ。
 (公式サイトより転記させていただきました)

4人の子供を育てながら、スーパーマーケットやパブで働くカレン。
休みの日にはバスや電車を乗り継ぎ、夫イアンの面会に向かうのですが、
これがなかなか大変そう。ノーフォークはロンドンの北東約160キロ位の距離、
しかもカレン達は田舎の村に住んでいるのですから。

それでも、刑務所で夫イアンの顔を見た彼女はとても嬉しそう。
子供達も久しぶりに会うパパに思い切り甘えるのです。
普段は夫・父親のいない日常を過ごし、たまの面会日には夫・父親との
時間を過ごす、こうした家族の日常が子供達の成長と共に綴られます。

特別な事は何も起こらない、そんな彼らの日々なのですが、
愛のある夫婦、愛のある家族って良いなぁとしみじみ思わせてくれる映画です。
静かに進行する物語の中、じわじわと温かい感情が沸き上がってきます。

子供達の演技にはわざとらしさがなく、ドキュメンタリーのような味わいさえ
あります。彼らは実の兄弟で、監督が5年間かけて撮影をしたという事ですが、
兄弟達の関係性がごく自然に見えるのには、そういった秘密があったんですね。
何気ない仕草、例えばバスの中で寝ている弟の体を落ちないように支える
兄ロバートの様子や、末っ子カトリーナがショーンに甘える様子など、
見ているこちらの頬が思わず緩むシーンが、この映画にぬくもりを与えています。

一方妻のカレンは、複雑な感情を内に秘めています。イアンを深く愛していても
彼がいない為に苦労したという気持ちを、やはり抱えているのですよね。
そんな彼女の感情のほとばしり、出所したイアンに対し
それまで抑えてきた気持ちが爆発した瞬間は、逆にホッとさせられました。
ただ、その後あの秘密を告白する必要はなかったんじゃないかなー。

ところで、マイケル・ナイマンの音楽は素晴らしいと思うのですが
個人的には、音が大きくて音楽が少し邪魔に感じてしまう瞬間がありました。

イアンのいる殺風景な刑務所の空間と、美しいノーフォークの村の景観、
そのコントラストも、家族のいる日常の大切さを象徴しているようです。

テアトル梅田 にて鑑賞。