ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「拝啓、愛しています」 〜涙がとまらない〜

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公式サイト:http://www.alcine-terran.com/haikei/

監督:チュ・チャンミン
原作:カン・プル
(2011年 韓国 118分)
原題:LATE BLOSSOM

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
静けさの余韻が漂う明け方に、まだ街灯に照らされている曲がりくねった路地裏を、
古びれたバイクで走る男の姿があった。彼の名はマンソク。
牛乳配達で小遣い稼ぎをしながら引退生活を送っている。

原作は、2007年に出版された人気漫画化家 カン・プルのベストセラー・コミックスで、
2011年に映画化され、観客動員数160万人を突破した。
(公式サイトより転記させていただきました)

妙齢の美女もスマートで格好良い男性も出てこない。でも恋愛映画。
恋愛というよりも、人間愛の映画かもしれません。

マンソク(イ・スンジェ)の乗るバイクがはね飛ばした小石が、
イップン(ユン・ソジョン)の顔を直撃し、彼女は転倒してしまいます。

自分のせいかと思わずかけよるマンソクですが、その口をついて出た言葉は
「俺のせいじゃないよな。後で文句いうな」などなど。
とにかく、めちゃくちゃ感じが悪いのです。

口は悪いけど、実は親切でおせっかいを焼くのが好きなマンソク。
最初は、ただの感じの悪いお爺さんとしか思えないのに、
見ている間に、その明るくてお茶目なキャラクターに心引き寄せられます。

主な登場人物はマンソクとイップン、そして駐車場の管理人をしている
グンボン(ソン・ジェホ)とその妻(キム・スミ)です。
それぞれが現役を引退し、高齢と言われる年齢にさしかかっています。

優しくておとなしいグンボンは、痴呆症の妻と暮らしているのですが、
その妻が留守中に家を飛び出し公園で遊んでいる時に、マンソクと出逢います。
マンソクは、厄介やなぁと思いつつ彼女を放っておけず、一緒に家を探す事にするのです。

マンソクが彼女をバイクに乗せて桜の下を走る映像が素敵でした。
このグンボンの妻は、痴呆症のせいか子供の様な心に戻っているので、
映像がキラキラしていてすごい青春しているんですよね。
韓国で有名な女優さんという事ですが、ちょっと左時枝さんに似ていて
コミカルで明るい感じ、そして色気も感じさせる方でした。

マンソクの孫娘ソナ(ソン・ジヒョ)や、古物商のダルス(オ・ダルス)も
時折加わりながらの人間関係がコミカルに描かれていて、
前半は笑いどころもたくさんありました。
なんせ、マンソクが可笑しいですからねー。一人で暴走する部分も
あるけど、彼の明るさが救いでしたよ。

グンボンの妻の病気が発覚してからの展開は、
ちょっとセンチメンタルな方向に行き過ぎてしまったかなぁ。
個人的には、男女の“愛”以上に“友情”にグッとくるので、
せっかく生まれた友情に終止符を打つという展開が、残念です。

韓国の映画は音楽の使い方が感傷的すぎると、私はいつも感じてしまうんですよね。
あと、マンソクがイップンと出逢ってからの様々な思い出を回想するシーンとかは
要らないと思います。そこは、見る側の頭の中にまかせておいた方が良いと思うのです。

けれど、この映画のように最初から涙が出て仕方がない作品はなかったなぁと
今思い返しています。携帯ティッシュを一袋使いきってしまった。
更年期障害で情緒不安定だから(笑)というのを差し引いても
こんなに、人の優しさが染みる映画は久しぶりです。

この先の人生、友人や家族を精一杯愛し、人の痛みに鈍感にならず
手を差し伸べられる人になりたい。なんて思わせてくれる映画です。

テアトル梅田にて鑑賞。