ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「 ル・コルビュジエの家」 〜イラつかせる男〜

EL HOMBRE

公式サイト:http://www.likesomeoneinlove.jp/

監督・撮影:ガストン・ドゥブラット、マリアノ・コーン
脚本:アンドレス・ドゥプラット
製作:フェルナンド・ソコロウィッツ
音楽:セルヒオ・パンガロ
(2009年 アルゼンチン 103分)
原題:EL HOMBRE DE AL LADO
 
※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
椅子のデザインで世界的に大成功をおさめたデザイナー、
レオナルド(ラファエル・スプレゲルブルト)は、
家族とクルチェット邸に住んでいる。それは成功の証。
ある朝、ハンマーの破壊音で目覚めたレオナルドは、
見知らぬ住人ビクトル(ダニエル・アラオス)が、
我が家へ向けて窓を作ろうとしていることを知る。
(公式サイトより転記させていただきました)

オープニングクレジット、モノトーンの背景だなぁと思っていると、
突然画面が激しく振動し、それが壁の裏表が映し出されたものだったとわかる。
これがすべての始まり。

主人公レオナルドは、工業デザイナーとしてヒット商品も生み出している。
何カ国語も話せて、コルビュジェの設計した家のオーナーでもあり、
いわゆる成功者といわれる人物。

だが、しかし!なのだ。
この人のコミュニケーション能力のなさというか、
責任能力のなさにとにかくイライラさせられます。

断りも無く、突然我が家に面した壁に窓をつくろうとしている隣人。
その隣人ビクトルになんとか窓をあきらめさせようとするレオナルドの言動が、
裏目に出ている気がするんです。

・最初から隣人を、自分たちとは違う低いクラスの人間だとみくびっている
・窓を許可できない事を妻や義父といった、自分以外の者のせいにする

などなど、その場しのぎのノリでしゃべってるだけで
相手に誠実に接してないのが、根本的にアカンでしょ。
あの不気味で下品な隣人ですら、この主人公よりはマシな気がしてきます。

問題解決の能力が低いのに、「俺を誰だと思ってるんだ」みたいな変なプライドがあるから、
ますます始末が悪いし。妻のいいなりなのは、自分自身への自信のなさの象徴なのかしらん。
この夫婦、自宅に招いた客を陰でバカにしたりと、とにかくイヤな感じなんですよね(笑)

予想してた展開とは違い、隣人がクレージーというよりは、主人公にかなり問題ありな印象。
隣家のハンマー音を現代音楽の効果音だと思いこんだり、笑いもあくまでシニカルな感じです。
そうそう、ビクトルが披露する指人形(?)は、妙にエロティックです。
登場人物を突き放して描いているようでも、何かお茶目な感じもする味のある作品ですね。

モダンな家具の中でも一番目を惹くのが、揺りかごのような椅子です。
アルゼンチンの新進デザイナー、ディエゴ・バティスタの作品で、
日本でも「プラセンテーロ・チェア」という名前で売り出されたそうです。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。