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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「最終目的地」 〜そこに居る意味〜

saishu

公式サイト:http://www.likesomeoneinlove.jp/

監督:ジェームズ・アイヴォリー
原作:ピーター・キャメロン
脚本:ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
音楽:ホルヘ・ドレクスレル
美術:アンドリュー・サンダース
衣装デザイン:キャロル・ラムジー
編集:ジョン・デヴィッド・アレン
プロデューサー:ポール・ブラッドリー、ピエール・プローナー
ラインプロデューサー:ディアナ・フレイ
(2008年 アメリカ 117分)
原題:THE CITY OF YOUR FINAL DESTINATION

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
南米ウルグアイの人里離れた邸宅に暮らす、自ら命を絶った作家の妻(ローラ・リニー)、
作家の愛人(シャルロット・ゲンズブール)と小さな娘、
作家の兄(アンソニー・ホプキンス)とそのパートナーの男性(真田広之)。
孤立し朽ちかけた屋敷で、漂うような暮らしを送っていた。
そこへ突然、亡き作家の伝記を書きたいというアメリカの青年(オマー・メトワリー)がやってくる。
妻キャロラインは頑なに伝記の執筆を拒み、兄アダムは公認を与える代わりに、
青年オマーにある提案をもちかける。やがて浮上する作家の隠れた著作の存在。
いつしか、愛人アーデンとオマーは互いに心惹かれあっていくが…。
ひとりの訪問者が止まっていた運命を動かす。そして辿り着く、それぞれの自分の居場所とは…。
(公式サイトより転記させていただきました)

ジェームズ・アイヴォリーのパートナー、イスマイル・マーチャントが亡くなった後、
初めて製作されたマーチャント=アイヴォリー・プロダクションの作品です。

素敵な映画でした。でも、何より印象の残ったのは
40才目前にして27才を演じるシャルロット・ゲンズブールの可愛さです。

この映画における衣装は、それを着る人物のパーソナリティというか
個性を巧く表現していました。
オチョ・リオスのような場所にいて、経済的にも余裕がない中、
何故こんなにファッショナブルでいれるのかという現実的な面には目をつぶるとして。(笑)

作家の妻キャロラインには強い意志と頑な心を思わせる、
黒を貴重としたカッティングの美しいドレス。
そして作家の愛人アーデンは、柔らかい生地の女性らしいワンピースドレス、
奇麗な色が多用されています。

少女っぽさを残すアーデン(シャルロット)のワンピースの裾がゆらゆらと揺れる様子は、
流れに逆らわず周りのモノを受け入れる彼女自身を表しているようです。

これらの衣装を、若さや美貌がなくても(笑)着こなしてしまうシャーロットの魅力は、
ファッションアイコンでもある母ジェーン・バーキンから受け継いだ天賦の才と言えるのかも。
DESTINATION02

出逢いを経て変化していく人間関係、そんな物語を追う楽しさがあります。
また、登場人物の描き方も繊細で、興味を引く面白さがあるのです。

初めてオマーに会う前はネックレス選びに迷っていたキャロライン、
彼女の頑固さの内側には何があるのだろうと気になるところですが、
物語が進むにつれ、その心の内も少しずつ見えてくるような気がします。
ローラ・リニーは、やっぱり巧いですね。

このキャロラインともう一人、オマーの恋人ディアドラもスパイス的役割のキャラクターです。
超現実的というか合理主義というか、ロマンなんてものとはほど遠いところにいそうな
彼女のような存在は、世俗的なものとは切り離されたようなオチョ・リオスという地を
現実を引き戻すような役割をはたしているとも言えるかもしれません。

オマーはオチョ・リオスで過ごすうちに、ここを訪れた最初の目的から離れ、
自分自身が求めるものに目を向けるようになります。
彼が選んだ最終目的地は“場所”というよりもそこにいる“人”との関わりを選んだ結果でした。

かつての作家の両親やその子供たち、アーデンやオマーも自分のルーツとなる国を離れ
異国での生活を送る人達です。彼らにはそれぞれ異国に安住の地を求める意味があるのです。

残念だったのは、前作「上海の伯爵夫人」よりは少しナチュラルな感じもしましたが、
真田広之さんの演技が苦手だった事。こればっかりは個人的な好みの問題かもしれません。

かの地を離れ過去との区切りをつけたキャロラインが登場する
ラストシーンも、観るものに充足感を与えます。

ハビエル・アギーレサロベのカメラワークが素晴らしく、
作品をより優美なものにしています。美しいですよ。

シネマート心斎橋にて鑑賞。