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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「俺の笛を聞け」 〜三大映画祭週間2012 その3〜

映画 あ行

三大映画祭週間2012:http://sandaifestival.jp/index.html

WHISTLE

監督:フローリン・サーバン
出演:ジョルジェ・ピステラーヌ、アーデ・コンデスク
2010年/ルーマニア・スウェーデン・ドイツ/ヴィスタ/94分
原題:EU CAND VREAU SA FLUIER, FLUIER 英題:IF I WANT TO WHISTLE, I WHISTLE

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
シルヴィウの少年院の刑期は残すところあと5日。
釈放を目の前に、長い間留守にしていた母親が戻ってきて弟を連れて行くと言い出した。
息子のように育ててきた大切な弟を―。
(公式サイトより転記させていただきました)

リアリティと、少しの甘さと。

あと2週間で少年院から出て、弟と暮らせる。それだけを楽しみにしていたシルヴィウ。
なのに、自分たちを捨てた母親が突然表れ、
1週間後に弟をイタリアへ連れて行ってしまうと言う。

あせるシルヴィウの様子を見ながら、イヤな予感に包まれます。
一つ前に見た「気狂いピエロの決闘」で、ナタリアからデートに誘われるハビエルを見た時よりも
もっと悪い予感です。本作は、もっとシリアスですから。

音楽は使わず(食事中に爆音でかけられていた流行歌にはビックリしたけど)
説明的なセリフもなく、手持ちカメラで撮ったような映像は、娯楽性ではなく
リアリティ重視の姿勢がうかがえます。
あえて言うと、ダルデンヌ兄弟の作品に近い感じです。

ところで、ルーマニアの少年院は本当にこんな雰囲気なんでしょうか。
施設のセキュリティは甘そうですし、少年たちは労働時間を農園のような場所で過ごし、
どこか牧歌的な雰囲気さえ感じられます。

もちろん、血気盛んで訳有りの少年(とは言っても全員10代後半以上には見えます)達
ですから、そこには争いが存在し彼らの間には力関係も存在しているようです。

そういった様子が見ている間に徐々にわかってきます。
シルヴィウは血の気は多そうですが、嫌なヤツではありません。
問題を起こすと出所できなくなるという弱みにつけこんで、リーダー格の少年に
因縁をつけられてもジッと我慢します。

おそらく彼は、母親に捨てられた後、病身の父親と弟の面倒をみてきたのでしょう。
生活が立ち行かなくなって犯罪に手を染めたのかもしれません。

最初のイヤな予感どおり、彼は一線を越えてしまいます。

母親を強く憎むシルヴィウの気持ちは少し理解できる気がしますが、
現実的には母親と暮らす方が、もしかしたら弟の将来のためになるかもしれないし、
最終的には弟が自分で決める事だと思います。
おそらく、シルヴィウは自分が心の拠り所を無くしてしまう事に
耐えられなかったのではないでしょうか。

シルヴィウが淡い恋心を抱くのは、ソーシャルワーカーのアナ。
彼女の柔らかさがあったから、コーヒーショップでのシーンが
無理のないものになったのかもしれません。
リアルなだけでは、やっぱり物足りないのかもしれません、映画って。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。