ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ぼくたちのムッシュ・ラザール」 〜“教室”という場所〜

LAZHAR

公式サイト:http://www.lazhar-movie.com/

監督・脚本:フィリップ・ファラルドー
原作:エヴリン・ド・ラ・シュヌリエール
製作:リュック・デリー、キム・マックルー
撮影:ロナルド・プラント
(2011年 カナダ 95分)
原題:MONSIEUR LAZHAR

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
モントリオールの小学校。
ある冬の朝、教室で担任の女教師が首を吊って死んでいた。
生徒たちはショックを受け、学校側は生徒たちの心のケア、後任探しの対応に追われる。
そんな中、アルジェリア移民の中年男バシール・ラザール(フェラグ)が
代用教員として採用されることになった・・・。
(公式サイトより転記させていただきました)

生徒が苛めにあっている疑いのある状況でも見てみぬふりをする教師、
苛められた側の生徒に転校をうながす学校、事実を隠蔽しようとする教育委員会、
いつから日本の学校は、そんな場所になってしまったんでしょう。
それとも、以前からずっとそうだったのか。。。

ムッシュ・ラザールは言います「教室とは、友情、勉強、思いやり、
それぞれの人生を捧げ分かち合う場だ。絶望をぶつける場ではない。」
子供時代に多くの時間を過ごす学校は、そうあるべきだと私も思います。
少なくとも、後々懐かしく感じられる場所でなければ。
(本当は、社会全体がそうあるのが理想だと思いますが)

だからこそ、教室であんな行為をした教師に対して、理解できないという
ラザールの気持ちは良くわかります。

真っ直ぐに机を並ばせたり、古典バルザックで書き取りを行わせるなど、
バシール・ラザールの教え方は古臭くて、周りからはなんだか浮いています。
(それもそのはず、と後で合点がいくんですが)

それでも、子供と真摯に向き合うその姿勢は自然と伝わるようで
次第に子供たちや周りから信頼されていくのです。

ここに登場する子供達は、みんなすごくイキイキしてます。
担任教師の死に責任を感じているシモン(エミリアン・ネロン)と、
そんなシモンに対して複雑な思いを抱くアリス(ソフィー・ネリッセ)、
親の影響なのか何かと上から目線で決め付けたがる生意気な女の子など。

特に、どことなく幼い頃のドリュー・バリモアを思い出させるような
アリス役の女の子がキュートでした。
LAZHAR02

アリスはおそらく事件以前から、問題を抱えているシモンを
気にかけていたんじゃないかなと思わせる母性のようなものを感じさせます。
子供は子供なりに難しい問題を抱え、必死に生きているんですよね。

最後の授業で、ラザールは自作の寓話を披露します。
この、大木がサナギを守ろうとする話が涙をさそいます。
久しぶりにしみじみと心地よく泣けたなぁ。

ラザール氏の壮絶な過去や、担任教師の自殺など、重い事柄を含みながらも、
どことなくユーモアも感じさせる空気感があります。
作品全体に流れる、何か淡い感じの温かさみたいなものが心地良い映画です。

テアトル梅田にて鑑賞。