ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ジョルダーニ家の人々」 〜そこに留まるものたち〜

RESTANO

公式サイト:http://giordanike-movie.com/音が出ます!

監督:ジャンルカ・マリア・タヴァレッリ
脚本:サンドロ・ペトラリア、ステファノ・ルッリ
撮影監督:ロベルト・フォルツァ
美術:ソニア・ペン
衣装:クラウディオ・コルダーロ
音響:レーモ・ウゴリネッリ、フルジェンツィオ・チェッコン、アレッサンドロ・パルメリーニ
編集:アレッサンドロ・ヘフラー
音楽:マルコ・ベッタ
製作総指揮:ガエタノ・ダニエレ
製作:ファブリツィオ・ザッピ
(2010年 イタリア/フランス 6時間39分)
原題:LE COSE CHE RESTANO

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ローマに暮らすジョルダーニ家は、技術者の父、元医師の母、外務省で働く長男アンドレア、
心理学者の長女ノラ、建築を学ぶ次男ニーノ、高校生の三男ロレンツォと、
一見不自由のない幸せな家族に見えた。
しかし三男の不慮の死をきっかけに、家族は心に秘めていた問題や困難に向き合うなかで、
一人ずつ家を離れていく。
彷徨える者たちが運命のように出会う人々、不法移民の女性とその娘、不治の病のフランス人、
戦場で記憶を失った大尉等・・・。一本の川がいつか大河の流れとなるように、
父と母、アンドレア、ニーノ、ノラ、それぞれの運命と人生は、ふたたび織りあわされて、
血のつながりや民族を越え、より大きな家族を成してゆく。
ラストシーンのジョルダーニ家の開け放たれた窓のように、さらに豊かに、開かれた未来に向かって―。
(公式サイトより転記させていただきました)

前編は、10時20分から休憩10分をはさんで14時まで、
後編は、14時30分から18時12分までと、前・後編を連続してみると
8時間近くかかるので、有休使って行ってまいりました。

途中眠くなることも全くなく、長く感じることもなく、
一日楽しめたという感じです。

元々は4話からなるテレビドラマというせいか、全体的にわかりやすいストーリーです。
それだけに俗っぽいというか、ベタな感じもします。
演出面も少しセンチメンタルに寄りすぎてるかな。。。。とか思ったりして。
音楽の使い方とかシーンの切り替え方が、ドラマ的やなぁという印象です。

簡単に言ってしまうと家族の崩壊と再生の物語ですが、
2〜3時間という限られた時間の中で収めてしまう映画とは違い、じっくりと
この家族、そして彼らをとりまく人たちと付き合うことができるのが魅力でしょうか。
そうする事で、それぞれの人物像も無理なく把握する事ができ、愛着も感じます。

俳優陣が魅力的なのと、歴史ある町並みや情緒を感じさせる風景、
そんなもののプラスアルファ要素がかなり大きく感じられます。
個人的には、「あしたのパスタはアルデンテ」でも父親役だった俳優さんが
ちょっとオーバーアクト気味かなと思ったりして。
なんせこの登場人物達とは6時間半という長いお付き合いをするので、色々目に付きます。

もちろん、チャーミングな登場人物もいます。
ちょっと気難しい次男ニーノの幼馴染ヴァレンティーナ、その明るさに救われます。
「小さい頃自分に誓ったの、いつかはするって」と不意にキスするショットは
可愛かったなぁ。いやぁ、暗いニーノにはあの明るさがやっぱり必要ですよ。

それから、シャーバ親子は大きなポイントでした。
不思議な包容力を持つシャーバのせいなのか、誰もいなくなっていたジョルダーニ家の
屋敷には、新たな家族が集うことになるのです。
シャーバの娘アリナ役のレイラ・ベクチは「パリ・ジュテーム」(セーヌ河岸)で
イスラム移民の女の子役でした。パーミンダ・ナーグラをさらに綺麗にした感じです。

末っ子ロレンツォのセリフに、塚本晋也の「鉄男」を深夜まで見て眠いというのがあって、
ちょっとニヤリ。ここだけ聞くとロレンツォは日本オタクなのかと一瞬思いますが、
「鉄男」はローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリをとってるので、
めちゃくちゃマイナーという訳でもないのかも。

次男ニーナは、父親の不倫を憎むのですが、結局は自分も倫理的に許されない
恋愛に足を踏み入れる事になるというのが、皮肉なのです。
このニーナとフランチャスカのエピソードは、なんだか安っぽくていただけなかったです。

一番“家庭”というものを忌み嫌ってた長男アンドレアが、
子供を中心とした家庭を作り出したというのは面白かったですね。

あと、ノラは心理学者という立場なのに患者に恋愛感情を抱くという
まさかのタブー無視な展開に、ちょっと安易さを感じました。
夫アルベルトが気の毒というか、あの温和な夫だから余計にそうなのかなと
想像したり。男女間の感情って理屈じゃ割り切れないから残酷ですね。

結論としてはDVD鑑賞でも良いかなとも思いましたが、贅沢な一日でした。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。