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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ-1「こわれゆく女」「オープニング・ナイト」「フェイシズ」

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公式サイト:http://www.zaziefilms.com/cassavetes/音が出ます!

映画祭や特集があると心弾むのだけど、同時にそれ以外の多くの作品をスルーしてしまう事になります。
B.カンバーバッチをはじめイギリス俳優陣が出演している「裏切りのサーカス」も見たかったけど、
時間的にムリやったし。。。。
けど、このカサヴェテス特集にはホント感謝!です。
スクリーンで見たカサヴェテスの作品は、ウン十年前に見た「グロリア」だけだったのですが
どの作品もとにかく濃くて内容が詰まってます。素晴らしい企画ですね。
十三の劇場まで何度も足を運ぶ価値は、十分に感じました。

まずは3本鑑賞したところで、一息つこうかと。
とにかく濃いですからね〜。見ごたえはあるけど、ちょっと疲れます。

※ネタバレ含みます。


こわれゆく女 HDリマスター版 [DVD]こわれゆく女 HDリマスター版 [DVD]
(2009/11/20)
ジーナ・ローランズピーター・フォーク

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<こわれゆく女>
脚本:ジョン・カサヴェテス
製作:サム・ショウ
(1975年 アメリカ 147分)※35mm上映
原題:A WOMAN UNDER THE INFLUENCE

【内 容】
精神のバランスを崩した妻(ジーナ・ローランズ)と、土木工事の現場監督を務める夫(ピーター・フォーク)。
壊れかけそうな家庭を繋ぎとめようとする夫婦愛を描いたカサヴェテスの代表作の1つ。
脚本はジーナ・ローランズ主演の戯曲として執筆された。
(公式サイトより転記させていただきました)

妻と二人きりの時間を過ごす約束をしたのに、急な仕事が入り家に帰れなくなった夫。
普段から妻の精神状態を気にしている夫は、妻の事が気がかりで仕方がない。
その夜、孤独に耐え切れず泥酔した妻はバーで男を拾い家に連れ帰ってしまう。
朝になり目覚めた妻は、自分の行動を認める事ができず心が壊れ始める。

そこへ同僚を連れて帰宅した夫。同僚達にスパゲティをふるまう妻だったが、
何かがおかしい。いつ何が起こるかわからないこの空気はすごい。
見ている側が緊張してしまう、ピリピリとしたシーンだ。

夫と妻はお互いに愛し合っているのだが、それが上手く噛み合わない。
夫は直情型で、つい声を荒げ乱暴に振る舞ってしまう。

そんな彼の行動のせいで、子供達は少しおびえている。
寒々しい海に出かけ、子供との絆を確かめようともがく父親は、悲しい。
これほど悲哀が漂う親子のシーンは、他には記憶に無い。

そして、母を守ろうとする子供達の姿。
父親に何度二階に追いやられても、母の元に降りていく子供達の姿、
家族の姿に涙腺がゆるんでしまう。

ジーナ・ローランズの狂気には圧倒される。が、それ以上に圧倒されたのは、
現実以上に現実的な感覚とでも言えば良いのか。。。。。
それぞれのシーンが“生きている”というすごさかもしれない。


オープニング・ナイト HDリマスター版 [DVD]オープニング・ナイト HDリマスター版 [DVD]
(2009/11/20)
ジョン・カサヴェテスジーナ・ローランズ

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<オープニング・ナイト>
脚本:ジョン・カサヴェテス
撮影:アル・ルーバン
(1977年 アメリカ 144分)※デジタル上映
原題:A WOMAN UNDER THE INFLUENCE

【内 容】
一人の有名舞台女優を通して、人が“老い”を自覚し始めた時に感じる焦燥や不安を描いた作品。
本作でベルリン国際映画祭で主演女優賞を受賞したジーナ・ローランズの演技は必見。
カサヴェテス作品の中で本作が唯一「夫婦役」として共演している。
(公式サイトより転記させていただきました)

「こわれゆく女」では、各シーンが持つ生命力みたいなものに圧倒されたが
こちらは役者達の上手さが生きている作品。
ラスト、マートルとモーリス(ジョン・カサヴェテス)が舞台上で見せる
まるでアドリブのようなセリフの応酬に、拍手をしたくなる。

女優マートルが舞台で演じるのは“自分の中の若さが死んで2番目の女が顔を出す”という話。
ある夜舞台を終えたマートルは、熱狂的なファンの少女が車に轢かれるという場面に出くわし、
精神のバランスを崩していく。
孤独感を募らせ、心を病む中年女性という役どころは「こわれゆく女」と共通している。

しかし、ここで描かれるのは家族の物語ではない。
若き日の自分の幻影に悩まされながらもそれと決別し、見事に舞台をつくりあげた
マートルという女優の話である。まさに、ジーナ・ローランズの為の映画。

この笑いを含んだ少し意外な展開は、やはり計算しつくされたものなのだろう。
バック・ステージものが好みという事もあるが、これまで見た3本の中では
ダントツに惹かれた。


フェイシズ HDリマスター版 [DVD]フェイシズ HDリマスター版 [DVD]
(2009/11/20)
ジョン・マーレイ、ジーナ・ローランズ

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<フェイシズ>
脚本:ジョン・カサヴェテス
撮影:アル・ルーバン
(1968年 アメリカ 130分)※デジタル上映
原題:FACES

【内 容】
関係の破綻した中流アメリカ人夫婦の36時間を描く。
男女の愛の葛藤を描いたカサヴェテス一連の作品の原点。
オスカー3部門でノミネートという成果を挙げ、ハリウッドにその存在を認知させた革命的傑作。
(公式サイトより転記させていただきました)

タイトル通り“顔”、その表情をとらえた映画。
見ている者はクローズアップされる“顔”から、その心情を察する。

高級娼婦(ジーナ・ローランズ)の家で、リチャード(ジョン・マーレイ)と
友人はバカ騒ぎをするが、友人の現実的な一言が原因で気まずくなってしまう。

その後自宅に帰ったリチャードだったが、ここでの夫婦の会話も上滑りな感じだ。
妻マリアは甲高い声で饒舌に話し続け、饒舌さと共に空虚さも増していく。

マリアは「ベルイマンの映画を観に行こう」と夫を誘うが、
リチャードは「憂鬱になるだけだ」と言う。
「若い頃のようにはしゃぎたい、ときめきたい」そんな気持ちの中年男にしてみれば、
なるほどベルイマンの映画なんて、面倒なだけかもしれない。

お互いに背を向けた時に現れた表情が、夫婦の関係を物語っている。
この後、リチャードが離婚を切り出した事で夫婦は現実と向き合うことになる。

マリアは友人たち4人でディスコに繰り出すが、女性達からは楽しんでいるというよりも
とまどいの気持ちがみてとれる。若さを羨みつつ、そのエネルギーに圧倒されている。
ここで知り合った若い男チェット(シーモア・カッセル)をめぐり
中産階級家庭の妻である中年女性4人それぞれの反応が、見ていて面白くもあり、痛い。

この後マリアを助けようと必死になるチェットのシークエンスは、唯一“愛”が感じられた。
チェットがマリアに言うセリフは、率直で嘘が無い。心が熱くなる。

妻マリア役は、当時ロバート・アルトマンの秘書だったというリン・カーリンという人。
それまで演技経験が無かったとは思えないほど
この映画では、この人の“顔”に惹きつけられた。

第七藝術劇場にて鑑賞。