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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ブラック・ブレッド」 〜村社会の閉塞感〜

映画 は行

PA NEGRE

公式サイト:http://www.alcine-terran.com/blackbread/

監督:脚本:アウグスティ・ビリャロンガ
原作:エミリ・テシドール
製作総指揮:イソナ・パソーラ
撮影:アントニオ・リエストラ
アートディレクション:アナ・アナバルゴンサレス
衣装:マルセ・パロマ
メイク:アルマ・カサル
ヘアメイク:サトゥル・メリノ
アシスタントプロデューサー:リュイス・フェランド
プログラミングプロデューサー:エリサ・プラサ
ラインプロデューサー:アレックス・カステリョン
音響:ダニ・フォントロドーナ、フェルナンド・ノビィージョ、リカール・カサルス
編集:ラウル・ロマン
音楽:ホセ・マヌエル・パガン
(2010年 スペイン/フランス 113分)
原題:PA NEGRE

ネタバレ含みます。

【ストーリー】
舞台は激しい内戦を終えた1940年代のスペイン・カタルーニャ
勝ち組と負け組が共存して暮らし、戦いの傷跡が生々しく残るこのカタルーニャの森で、
11歳の少年アンドレウ(フランセスク・クルメ)は血まみれになった親子の遺体を発見する。
彼らが最期の瞬間に遺したのは「ピトルリウア」という謎の言葉。
それは子どもたちの間で語り継がれる、洞穴に潜んだ翼を持つ怪物の名前だった。
だが、最愛の父(ロジェール・カサマジョール)に殺人の容疑がかけられた時から、
アンドレウの世界は音を立てて崩れはじめる。
(公式サイトより転記させていただきました)

コピーでうたわれているような“ダーク・ミステリ”という感じは薄かったですね。
とはいえ、冒頭からくりひろげられる残酷なシーンは、結構キツイ。
(崖から馬が落ちるシーンは、どうやって撮影したんでしょう?!)

少年アンドレウは、崖から落ちて瀕死状態の友達を発見します。
ここからアンドレウは、目撃者としての役割を果たしていくことになります。

父親と村長の相容れない関係、従妹のヌリア(マリナ・コマス)と教師の関係、
村長の母に対する執着など。

そして両親の秘密が明らかにされたとき、アンドレウは疑いを知らない少年時代に
別れを告げることになるのですが、家に押しかけてきたある未亡人が一方的に話すという
秘密の明かされ方が、なんだか面白くないというか深みを感じなかったですね。
唐突やったし、もうちょい工夫が欲しかったかな。

内戦後の歪んだ人間関係が存在するという前提を別としても、
この閉鎖的・排他的な社会、異なるモノを取り除こうとする村の空気は、
異様なモノを感じました。

その中にあって、結核(?)で僧院に収容されている青年には精神的な開放感があり、
彼の登場するシーンには爽やかさとおだやかさがありました。

母が大切に持っていた写真のマルセルの翼や、僧院の青年が見せる羽ばたく仕草など、
鳥=自由な思想の象徴となっています。
そして、自由を象徴する鳥(「ピトルリウア」という鳥人間)を殺したのは
彼自信がその思想のせいで村八分的な扱いを受けていた父・ファリオルというのが皮肉です。

ファリオル自身が鳥を飼い大切にしていたという描かれ方は、彼自身は自由に憧れつつも
結局は凝り固まった考えから開放されなかった、村から出て行く事が出来なかったことへの
反動のようにも思えます。

それにしても、あれだけ理想を語っていた父親が、実は人間として許されない行為に
手を染めていたという展開は、なんだかちょっと受け入れ難いというのが私の感想です。

この映画は監督が、エミリ・タシドール著『黒いパン(ブラック・ブレッド)』と『鳥殺しの肖像』の二作品から
着想を得たということですが、特に『鳥殺しの肖像』におけるスペイン内戦の描き方が気に入ったという事です。
「内戦は、隣人同士の戦いであって、お互いの知り合いが殺し合い、結局、国を荒廃させてしまった」という
監督の言葉にありますが、その後20世紀に起こった内戦では同じような事が繰り返されているんやなぁと
しみじみ思います。人間て。。。。ほんとに進歩しないというか歴史から学ばないですね。

主役の男の子は演技が今ひとつやったかなぁ、なんて思いましたが、
ヌリア役の女の子が上手い。森を背景に少し暗めな色彩の映像も美しいです。

テアトル梅田にて鑑賞。