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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「刑事ベラミー」 〜フランス映画未公開傑作選-2〜

france

公式サイト:http://www.eiganokuni.com/meisaku5-france/movie.html

監督・脚本:クロード・シャブロル
脚本:オディール・バルスキ
製作総指揮:フランソワーズ・ガルフレ
音楽:マチュー・シャブロル
(2009年 フランス 110分)
原題:BELLAMY

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
妻(マリー・ビュネル)の生家で休暇を過ごしていたベラミー警視(ジェラール・ドパルデュー)だったが、
自宅の周りをうろつく見知らぬ男(ジャック・ガンブラン)に呼び出される。
男はベラミーに「結果的に一人の人間を殺してしまった」と告白する。
今、世間を騒がせている保険金殺人事件に関係しているようなのだ。

「目に見えぬ別の物語が必ずある」

先日はクロード・ミレールの遺作を鑑賞したわけですが、
こちらも、シャブロル監督最後の作品。
両作品とも豪華なキャスティングなのに、未公開だったのが不思議です。

ベラミーは“警視”なのになぜ“刑事”というタイトルが付けられたんでしょうか?
タイトルから想像する、いわゆる“刑事モノ”のような映画ではありません。
謎解きなんていうものは存在せず、人間観察というか、
犯人やその周辺の人物にスポットライトが当てられていきます。

それは主人公ベラミーのスタンスそのもので、彼自身“殺人事件”そのものよりも、
人間に対して大いなる興味があるようです。

犯罪映画を多く撮ったと言われるシャブロル監督ですが、
私が見た数少ない何本かの作品を思い返してみても、
彼はいわゆるイギリスの推理モノに見られるような、謎解き仕立てのストーリーを
創ることには、さほど興味はないように見受けられました。

これは、ジョルジュ・シムノンの「メグレ警視シリーズ」にも共通しているのかもしれません。
この映画の中でベラミーは、パイプこそくわえていませんが、
犯罪そのものよりも、そこにいたる必然性を重視する傾向や、
善悪をハッキリ・キッパリと分けない(まさに“目に見えぬ別の物語”の存在を指し示す)
あたりが、メグレ警視をイメージした人物像のように思えます。

殺人事件よりも興味をひかれるのは、刑務所帰りで粗野なベラミーの弟の話です。
実はベラミーには人には見せない一面があり、弟を嫌悪しつつも彼を突き放せないのは、
自分自身の暗い部分を自覚しているからなのかもと、見る側の想像力をかきたてます。
また、犯罪者の心情にまるで寄り添っているようなベラミーの行動も、
そこらへんが関係しているのかもしれませんね。

ベラミーは、何かにつけて妻の胸やお尻をさわるのですが、その度に事件のことや
他の事に思考が飛ぶきっかけがあり、なかなか色っぽい展開にはなりません。
この夫婦の関係性、描き方が面白かったですね。何気ない会話一つとっても。
「俺は運がいい」と言った次の瞬間、マンホールにあぶなく落ちそうになるシーンはお気に入りです。

それにしても、ジェラール・ドパルデュー、歩くたびにぜぇぜぇ息がはずんで苦しそう。
いくらなんでも、もうちょい節制した方がよいと思うんですけどね。

十三 第七藝術劇場にて鑑賞。