ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「サンダカン八番娼館 望郷」 〜吉永小百合さんも好きだけど〜

サンダカン八番娼館 望郷 [DVD]サンダカン八番娼館 望郷 [DVD]
(2004/11/26)
栗原小巻高橋洋子

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監督:熊井啓
脚本:広沢栄、熊井啓
原作:山崎朋子
製作:佐藤正之、椎野英之
音楽:伊福部昭
撮影:金宇満司
美術:木村威夫
(1974年 日本 121分)

【ストーリー】
女性史研究家・圭子(栗原小巻)は、ボルネオの港町サンダカンを訪れていた。
娼婦として働く為海外に渡航した日本人女性、いわゆる“からゆきさん”の足跡をたどる旅は、
島原で出会った、元からゆきさん・おさき(田中絹代)に聞いた話を裏付けるための旅でもあった。

CS放送を録画し、再鑑賞。
かなり前に鑑賞した時は、恥ずかしながら“からゆきさん”の存在を知らなかったので、
ちょっとしたショックを受けたのは覚えています。
かつての日本では、貧しい家庭の娘が身売りして海外へ行ってたわけですが
この映画で言えば、おさきさんが語るその“過去”の部分にばかり目がいっていました。

今あらためてこの映画を見ると、少女達の娼婦時代も悲惨ですが
むしろ帰国してから彼女たちが受けた扱いに、村社会の排他主義的な部分を見たようで
嫌悪感を感じます。どんな仕事をするのかの詳しい説明もなく身売りされた少女達が
おそらく恋焦がれたであろう故郷には、彼女たちを快く迎える優しさはなかったのでしょうか。

それから、圭子の取材の仕方にはなんだかアンフェアなものを感じてしまいます。
最終的にはおさきさんに身分を明かす圭子ですが、それは全てを聞き出した後なわけで、
おさきさんの好意を見越した上での告白といった印象を受けました。

だとしても栗原小巻さんの美しさに、ついつい圭子に対する見方も甘くなってしまいます。
先日「スリランカの愛と別れ(1976年)を見た時も思いましたが、本当に上品な女優さんです。
(セリフの言い方や演技は、正直ちょっと大げさなものを感じてしまいますが)
吉永小百合ファンが“サユリスト”と呼ばれたのに対し、栗原小巻ファンは“コマキスト”と呼ばれた」
とウィキにはありますね。
こういう品のある俳優さん、今の若い方の中にはいらっしゃらないかも。

それから、若かりし頃のおさきさんを演じた高橋洋子さん、懐かしいです。
確かNHK朝の連ドラのヒロインをやってはりました。
結構平凡なお顔立ちなので、娼婦達の中では探さないとわからないくらい
存在感が薄いんですが(笑)、アップになった時、特に田中健さんとのシーンは
ハッとするほど色っぽいんですよ。これが役者!ということなのかもしれません。

映画を見てまた思いをめぐらせたのは、売春婦として売られたタイの少女達のこと。
先日もこの本を紹介しましたが現代も世界中にいる奴隷達、その存在に衝撃を受けました。

グローバル経済と現代奴隷制グローバル経済と現代奴隷制
(2002/10)
ケビン ベイルズ

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奴隷によって成り立っている経済、そこから抜け出すのは難しいだろうけど、
彼らの労働によって生まれた商品を買わないという事が、
まず私たちにできる小さな一歩だと思います。