ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「ピナ・バウシュ 夢の教室」 〜未知の体験〜

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公式サイト:http://www.pina-yume.com/音が出ます!

監督・脚本:アン・リンセル
撮影監督:ライナー・ホフマン
(2010年 ドイツ 89分)
原題:TANZ TRAUME

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
世界的な舞踊家、ピナ・バウシュのもとに、40人のティーンエイジャーが集まった。
演劇好きの少年、ロマの子、不慮の事故で父を亡くした少女やヒップホッパー…。
性格も家庭環境もバラバラで、ピナの名前すら知らない彼らに共通するのは、
誰一人として、ダンスを習った経験がないこと。そして、たった10ヶ月後に、
ピナ・バウシュの代表的作品「コンタクトホーフ」の舞台に立つこと。
(公式サイトより転記させていただきました)

先日鑑賞した「Pina ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」でも出てきた
「コンタクトホーフ」(1978年、ピナ・バウシュ作)に挑戦するティーンエイジャー達のドキュメンタリー。

このコンテンポラリーダンスは、素人の私が見ても普通のダンスとは一線を画しています。
演じる子供達が習得すべきなのは、ダンスの技術的な面では無いわけでして、精神面が重要というか。
彼らに要求されているのは、自分の内面を解放するという事なのです。

愛がテーマというこのダンス、男女の愛をまだ知らない、知ってても経験の浅い彼らにとっては
なかなかの難題かもしれません。いやぁ、たとえ愛に関する経験が豊富でも、難しいかも。
ましてや、彼らは舞台上でのダンスや演劇の経験が全く無いわけですし。

最初のうちは、ダンスをどう受け止めたらよいのか全くわからないと言ったり、
とまどっている子供達の様子からは、率直にものを言える環境を感じました。
わからないものは「わからない」と正直な気持ちをぶつけてくる子供達の様子は、
ノビノビしていて良いですよね。いくら巨匠と言われる人の作品であっても
理解できない気持ちを伝える事は必要ですから。

自分に果たしてできるのだろうかと不安を口にする彼らですが、
その成長、変化には目を見張るものがありました。
そんな子供達を指導するベネディクトとジョーの眼差しが、とても温かいんですよね。
自分を解き放ち無心に踊るという事は、子供達にとって何ものにも代えがたい経験になったと思います。

そうそう、10ヵ月という限られた練習時間しか無いと言いつつ、その間にも長期休暇は取ってるようでした。
ここらへんは(休暇はきっちり取るという)ドイツ人流なんでしょうか。

「Pina」でも何度も登場した、懸垂式(ランゲン式という種類らしい)モノレールが
ここでも印象的です。まだ二度目の遭遇なのに、何故か懐かしい気持ちになるというか。
この作品を見ると、もう一度「Pina ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」を見に行きたくなります。

テアトル梅田にて鑑賞。