ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ボリス・バルネット傑作選 〜バルネット初体験〜

boris

公式サイト:http://www.espace-sarou.co.jp/boris/

※ネタバレ含みます。

『帽子箱を持った少女』
監督:ボリス・バルネット
脚本:ワレンチン・トゥルキン、ワジム・シェルシェネヴィチ
撮影:ボリス・フランツィソン、ボリス・フィリシン
出演:アンナ・ステン、イワン・コワリ=サムボルスキー、ウラジーミル・フォーゲリ、セラフィーマ・ビルマン
(1927年/68分/サイレント/白黒)
原題:Девушка с коробкой
【ストーリー】
帽子作りのナターシャは、貧しい学生イリヤと知り合い、モスクワで住む部屋を確保するため偽装結婚する。
ある日、代金のかわりに渡された宝くじが当たったことで、さあ大変!渡した男がくじを奪回しようと血眼になり、
イリヤとの恋の行方もからんで、ナターシャをめぐる大騒動が巻き起こる。
サイレントならではの軽やかでコミカルな動きが画面いっぱいに広がる初期バルネットのキュートなコメディ。

『国境の町』
監督:ボリス・バルネット
原作:コンスタンティン・フィン
脚本:コンスタンティン・フィン、ボリス・バルネット
撮影:ミハイル・キリロフ、A・スピリドノフ
音楽:セルゲイ・ワシレン
出演:エレーナ・クジミナ、セルゲイ・コマーロフ、ハンス・クレーリング、アレクサンドル・チスチャコフ
(1933年/96分/トーキー/白黒)
原題:Окраина
【ストーリー】
帝政ロシアの片田舎。ドイツとの静かな国境の町に、第一次世界大戦、そしてロシア革命の波が押し寄せる。
資本家は、軍靴の製造でひともうけしようとし、若者は前線におくられる。
ドイツ軍の捕虜とロシア人の靴屋の娘の許されざる愛を通して
戦争の無意味さを静かに訴えるバルネットの代表作。

『青い青い海』
監督:ボリス・バルネット
脚本:クリメンティ・ミンツ
撮影:ミハイル・キリロフ
音楽:S・ポトツキー
出演:ニコライ・クリューチコフ、レフ・スヴェルドリン、エレーナ・クジミナ
(1935年/71分/トーキー/白黒)
原題:У Самого Синего Моря
【ストーリー】
カスピ海で嵐にあって難破した船の乗組員、アリョーシャとユスフは、ある海辺の村で機関士として働くことに。
やがて二人は、コルホーズの美しい娘に一目惚れしてしまい、ライバルに……。
美しくダイナミックな海の表情を背景に、若者たちの愛と友情物語を歌と踊りにのせて描く
ロマンティックなミュージカルコメディ。

(以上、公式サイトより転記させていただきました)

2月末から約1カ月にわたり上映されていた「ボリス・バルネット傑作選」も今週末で終わり。
上記の3本しか見られなかったけれど、バルネットの世界を垣間見れたようで
とても楽しく充実した時間を送ることができました。

なんていっても『帽子箱を持った少女』の可愛らしいこと! この映画の軽やかさはとても心地良い。
サイレント(伴奏音楽付の)らしくドタバタもあり、登場人物の動きや表情は誇張されているんだけど、
主人公ナターシャには何とも言えない魅力がある。彼女のファッション(帽子やストールも含め)もお洒落。
イリヤにキスして欲しくて唇を針でつくところと、その後の表情には笑ってしまいます。
ふてぶてしい感じだった帽子屋の女主人やその夫も、最後には可愛いなぁと思える映画なのでした。

『国境の町』は社会派ドラマ。戦時下であっても、敵国であっても、そこに人間同士の心の触れ合いを
見出したいという、バルネットの希望のようなものを感じます。

そして『青い青い海』、エレーナ・クジミナ(『国境の町』で可憐な少女だった)が
ここではモテモテのヒロイン役。この人、実生活ではバルネット夫人だったようです。
海と波のシーンが素晴らしくて、この時代によくまぁこんなのが撮れたなぁと感心しきり。

この3本に共通する、軽やかさや温かさ、爽やかさといった味わいは、心地良かった。
何より、映画を見始めた子供の頃に感じたワクワクするようなそんな気持ち、
そんな原点のようなものを思い出させてくれた映画たちでもあったなぁと思うのです。

今回時間の都合がつかなくて見られなかった「騎手物語」と「レスラーと道化師」、
この先なんとか観る機会が訪れるように願うばかりです。

十三 第七藝術劇場にて鑑賞。