ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「生きてるものはいないのか」 〜「サンキュー世界…」〜

ikiteiru

公式サイト:http://ikiteru.jp/top.html音が出ます!

監督・脚色・編集:石井岳龍 
原作・脚本:前田司郎
プロデューサー:大崎裕伸
撮影:松本ヨシユキ
撮影補:御木茂則
録音:三澤武穂
美術監修:磯見俊裕
音楽:石井榛 
Main Theme Guitar Played:田渕ひさ子
Music Arranged&音響監督:勝本道哲
(2011年  日本 113分)

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
病院に併設された大学キャンパス、学生たちがいつもの午後を過ごしていた。
病室を抜け出す娘、妹を探す怪しい男、都市伝説を語る学生たち、
三角関係の学生と喫茶店員、大事故を目撃した男たち、踊りを練習する学生たち、
医療事務員に片思いの耳鼻科医、アイドル大学生、子供を捜す母親、
そんなありふれた日常に、突然、最後の瞬間が近づいてくる。それはこの世の終末なのか・・・。
(公式サイトより転記させていただきました)

よくおじゃまするブロガーさんのレビューを拝見し、ピン!ときたものがあったので
アラン・レネ監督作品は次に回し、この映画を見に行って参りました。

五反田団主宰・前田司郎原作の舞台を映画化した作品で、
「セリフはほぼ原作のまま」という監督の言葉があります。
そのセリフが実にくだらなくて笑ってしまいます。

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」ではカメラ目線で「嘘だけど」を連発してた
染谷将太クンがチラシにドドーン!と映っています。
だけど彼が主役という訳でもなく(うん?! 最終的には主人公かも)、群像劇といった感じです。

登場人物達はどこかズレてるようなユル〜い会話をくりひろげ、
その最中に次々と人が死んでいくという、日常と非日常がないまぜになったような感覚。
人が死んでいくという状況が何故か、ナンセンスな笑いの中に溶け込んでいる。
この会話劇を見ていると、元が戯曲やったのがうなずけるのでした。

終末を描いた作品で、こんな風変わりなモノは初めて見たかもしれません。
あの「メランコリア」でも、映像の中に訪れる終末の予感が散りばめられ(というかはっきり示唆されてたけど)
それが徐々に明らかになるという一定の手順を踏んでいましたもんね。
この映画には、“人間の存在意義”なんていう哲学的見解を笑い飛ばすような一種の軽さがあります。

当たり前の事かもしれませんが、俳優さん達(素人の方もいらしたようです)が皆さんちゃんと
お芝居をしてらしたので、たまに邦画を見ていて感じる恥ずかしさ(演技のヘタな出演者)はありません。
話題性だけで芝居の出来ない人を出すような映画では無い事に、安心感を覚えます。

ユニークな登場人物が多いというか、キャラがたってるというか、結構視覚的にも面白かったですね。
あの「もうちょっとアンニュイな感じで」っていうダンスとか、アイドルグループ“トウホウケンブンロック”(笑)の
メンバーでもある大学生のお尻とか、結構ベタなんですけど可笑しい。←この人の再登場にちょっと驚き。

そんなユルユルな展開の後、傍観者的存在だったケイスケ(染谷将太)が迎える終末の景色は、
そこまで展開される人間のジタバタした世界とは一線を画しているのです。

飛行機が放物線を描きながら墜落し鳥たちがいっせいに落下しても、
夕焼けはどこまでも美しく、自然の壮大さを感じさせるラストシーンは開放感に溢れ、
重苦しい空気はないのでした。やっぱり不思議な映画です。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。