ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「SHAME -シェイム-」 〜ファスベンダーお見事!〜

shame

公式サイト:http://shame.gaga.ne.jp/音が出ます!

監督・脚本:スティーヴ・マックィーン
脚本:アビ・モーガン
プロデューサー:イアン・カニング
(2011年 イギリス 101分)
原題:SHAME

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
男の名前は、ブランドン(マイケル・ファスベンダー)。
ここニューヨークで働き、会社ではそれなりに成果をあげている。
洒落たマンションに一人で暮らし、外見的には魅力的と言っていい独身男性だ。
だが、今日もブランドンは、誰かと恋に落ちることも、新しい趣味に目覚めることもなく、
ただ黙々と勤勉にセックスと、セックスにまつわることに没頭している。
そんなブランドンの日常に、突然変化が訪れる。恋人に捨てられた妹のシシー(キャリー・マリガン)が、
しばらく泊めてくれと、強引に押しかけてきたのだ。
(公式サイトより抜粋させていただきました)

生ける屍のような空ろな表情でベッドに横たわる一人の男性。青いシーツの色が
カーテンを開けると水色に変わる。センスを感じさせる構図のオープニング。

セックス依存症というのは何かと奇異な目で見られ、面白おかしく取り上げられがちですが、
他の依存症と同様、病気であり治療を必要とするものです。

依存症のブランドンを演じるのは、フランソワ・オゾンの「エンジェル」でエンジェルの夫役だった
マイケル(ミヒャエル)・ファスベンダー。スーツを着た姿はパリッとしていて知的に見え、清潔感もある。
なので、会社のトイレでも自慰を繰り返し、家に帰るなりアダルトサイトにアクセスするその姿とは
大きなギャップがあるんですよね。観客は、誰にも言えない裏の顔を目撃しているという感じです。

彼が依存症に陥った原因は何なのか? それは突然登場する妹の存在によって
少しずつ解き明かされます。(結果的にはコレという応えは用意されていませんが)

シック(Chic)の“I want your love”と共に現れた妹シシー、
彼女の方は恋愛依存症のようです。そして、自傷行為を繰り返しているよう。
自分の生活を乱すシシーを迷惑に感じているブランドンですが、
この兄と妹の間には、切りたくても切れない絆のようなものが見えます。

本当の自分を出さず人と距離をとって生きている、そんなブランドンですが
会社の同僚マリアンヌ(ニコル・ベーハリー)とのデートシーンは、
ちょっとだけ彼が本音を出す、少しホッとする場面でした。
それだけに、マリアンヌとの関係が築けないのは残念としか言いようがない。

シシーと大喧嘩して部屋を飛び出し、捨て鉢な態度で夜の街を徘徊するブランドン。
満たされることの無い欲求に囚われる彼の姿は、悲しくて惨めでした。
マイケル・ファスベンダー、なんて真に迫る演技なんだろう。

「私たちは悪い人間じゃない。悪い場所にいただけ」というシシーの言葉から、
二人が抱えるトラウマが、共通の記憶として今もそこにあるのがわかります。
“愛”を求めているのに。。。その空白を埋められない行為に依存してしまっている二人。
他者を傷つけるのではなく、自分自身を傷つけ痛めつけているこの兄弟の姿に
胸がいたくなります。

最後がまた、思わせぶりなんですよね。それにしても、地下鉄の女性の薬指のダイヤモンド、大きい。

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。