ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「メランコリア」 〜怖ろしくも美しい終末〜

MELANCHOLIA

公式サイト:http://melancholia.jp/音が出ます!

監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
製作:ミタ・ルイーズ・フォルデイガー、ルイーズ・ヴェス
撮影:マヌエル・アルベルト・クラロ

(2011年 デンマーク/スウェーデン/フランス/ドイツ/イタリア 135分)
原題:MELANCHOLIA

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
巨大惑星メランコリアが地球に接近する中、ジャスティン(キルステン・ダンスト)は盛大な披露宴を催す。
姉クレア(シャルロット・ゲンズブール)の夫(キーファー・サザーランド)が所有する
豪勢な屋敷での宴は盛況だったが、花嫁のジャスティンはどこか空虚な表情だった。
披露宴を取り仕切った姉夫婦はそんな妹を気遣うが…。(シネマトゥデイより転記させていただきました)

映画上映前のトレーラーは計4本あり、その中で気になったのは2本。
「鉄の女の涙」でのメリル・ストリープの話し方は、マーガレット・サッチャーそのもので上手い。
好き嫌いは別として(笑)。
マリリン 7日間の恋」はミシェル・ウィリアムズ主演なんで、楽しみです。
本物のマリリンに比べるとかなり庶民的な感じではありますが。

さて、ラース・フォン・トリアーがその発言でカンヌ映画祭出入り禁止となったのは記憶に新しいところですが、
前作「アンチクライスト」と同様にスーパースローを駆使した映像には、今回も圧倒されました。

憂鬱な表情のジャスティンの周りを落下する鳥たち、整えられた庭園、
ブリューゲルの“雪中の狩人”が燃え、馬が倒れる。そして地球と惑星メランコリア
ジャスティンの心の世界(予言?)を形にしたという感じでしょうか。
このプロローグで、映画の内容をすでに語ってしまってますやん!とは思いましたが。

使用されてる音楽がワーグナーというのも、大仰な感じで合ってるかも。
ワーグナーを知りもせずにこんな事をいうと怒られそうなんですが、
その音楽は“長くて壮大”なイメージで苦手なんです。
ちょっと大げさで憂鬱な気分にさせる独特なトリアー監督の世界には
いかにもピッタリな印象を受けました。

第1部はちょっと長すぎたかなぁー。結構中だるみな気分でした。
父デクスター(ジョン・ハート)が女性を二人同伴してたり、
母ギャビー(シャーロット・ランプリング)が、いきなり場の空気をぶちこわしたり、
そんなエピソードは必要なかった気もするし。
ウェディングプランナー(ウド・キアー)が常にジャスティンを見ないようにしていたのは
ちょっとだけ面白かったけど。

それに反し、第2部はテンポが良かったですね。
キルステン・ダンストの三白眼とは違い、シャルロット・ゲンズブールが主人公だと、
なんか安心感があるせいなのか(笑)。

大惑星が近づくにつれ、精神的に不安定になっていくクレアと
一種の清清しさを感じているようなジャスティンの様子が対照的で面白いし。
全裸で月の光を浴びるジャスティンの映像は一種異様で、
見てはいけないものを見たようなクレアの気持ちがわかるような気がします。

映画とは直接関係ないけど、Vネックのセーターにパールのネックレス、
ラバーブーツといったシャルロットが着こなす普段着が素敵。ナイトガウンも可愛いかった。
逆に、第1部パーティのフォーマルウェアでは、
シャルロットは体の薄さが強調されてしまっていて貧弱だったのに対し、
キルステン・ダンストがまさしくゴージャスで着映えしてましたね。

さて、映画のラストですが(ここから激しくネタバレ含みます)
自分に置き換えてみると、クレアと同じような反応をしてしまうんやろなぁと思いますね。
けれど、普段は目を向けない“暗い世界”に存在する魂を持つ人にとっては、違う側面があるかもしれません。

そのせいか、迎えるラストシーンは怖いはずなのにどこかホッとさせるところがあるのです。
健康な精神状態で考えると悲惨な出来事以外のナニモノでもないのですが、
それとは逆の世界が存在するのも容易に想像できるのです。

そして、エンドロールの間は映画の余韻にひたりたかったのですが、
ちょっとした事でそれもままならず、残念でした。
シネコンは、スクリーンの大きさや座席に肯定差があるのが良いなぁと思うのですが、
常識では考えられないようなマナーの悪いお客さんに遭遇する時があるのが難点ですね。

大阪ステーションシティシネマにて鑑賞。