ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「サウダーヂ」 〜山王団地→サウダーヂ?〜

SAUDADE

公式サイト:http://www.saudade-movie.com/

監督:富田克也
脚本:相澤虎之助、富田克也
撮影:高野貴子
録音・音響効果:山巌
助監督:河上健太郎
編集:富田克也、高野貴子
スチール:廣瀬育子
エグゼクティブ・プロデューサー:笹本貴之
プロデューサー:伊達浩太朗、富田智美
制作:空族、『サウダーヂ』製作委員会
(2011年 日本 167分)

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
山梨県•甲府。変哲の無い街。人通りもまばらな中心街、シャッター通り
不況の土木建築業、その中に日系ブラジル人•タイ人をはじめとする様々な外国人労働者たちがいる。
HIPHOPグループ「アーミービレッジ」のクルー•猛(田我流)は“派遣”で土方として働き始める。
両親は自己破産しパチンコに逃避、家庭は崩壊している。弟は精神に異常をきたしていた。
猛の働く建設現場には多くの移民達が働いていた。
そんな中、猛は現場で土方ひとすじに生きて来た精司(鷹野毅)や、
同じく派遣されてきた、タイ帰りだという保坂(伊藤仁)に出会う。

“saudade” 一言では説明できないポルトガル語。郷愁、情景、憧れ。そして、追い求めても叶わぬもの
(公式HPより転記させていただきました)

2時間47分も見ていたとは思えないくらい、中だるみすることもなくずっと面白かった。
緊張感がとぎれそうになるタイミングで、ちょうど場面が切り替わる。そのタイミングが絶妙だったんですよね。
特に優れたストーリーという訳でもなく、ハラハラ・ドキドキする訳でもないんですが、
娯楽映画としても成り立つ面白さを感じました。

正直言って、日本語のラップってどーも寒いなぁとこれまで感じていた私ですが、
猛がシャッター通りを歩きながら韻を踏んでいるシーンは良かったなぁ。
日本語がラップに向いてない云々はひとまず置いておいて、
猛から出て来る言葉には切実さがあります。

一方、猛の後輩まひるや出馬予定の政治家が語るのは、安っぽく中身のない言葉です。
あまりにもぺらっぺらすぎて、思わず笑ってしまいます。
ノンフィクションのようなリアリティもある反面、とにかく胡散臭〜い人がいっぱい出てくるので、
そういう点では逆にフィクション的面白さがあります。

精司の意識が自分の青春時代・ボウイが流行ってた時代へと飛ぶシークエンスは印象的だけど、
暴走族たちで賑ってる町よりもシャッターが降りてる町の方がまだ良いな、私としては。

映画の中では、普段の会話・特にどうって事のないくだらない会話がやたらと多いのに、
なんで退屈しなかったんだろう。
もし、実生活で(たとえば職場で)あんな会話する人達が一緒だったら、間違いなくウンザリするのに。
セリフが聴き取れない部分や、何やってるのかわからないシーンも何箇所かあったんですが、
それが特に問題に思えなかったのも不思議でした。そういう意味では、映画って面白いですよね。
とにかく不思議なパワーのある映画。試しにご覧になってください。

シネ・ヌーヴォーにて鑑賞。