ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「ブリューゲルの動く絵」 〜豪華版“額縁をくぐって物語の中へ”〜

the mill

公式サイト:http://www.bruegel-ugokue.com/音が出ます!

監督・製作・脚本・撮影監督・音楽:レフ・マイェフスキ
脚本:マイケル・フランシス・ギブソン
製作総指揮:アンゲルス・シレジウス
共同プロデューサー:フレディ・オルソン
ラインプロデューサー:マウゴジャータ・ドミン
撮影監督:アダム・シコラ
衣装デザイン:ドロタ・ロクエプロ
美術:カタジーナ・ソバンスカ、マルセル・スラヴィンスキ
メイク・デザイン:ダリウス・クリシャック、モニカ・ミロフスカ
音楽:ヨゼフ・スカルツェク
編集:エリオット・エムス、ノルベルト・ルジク
助監督:クシシュトフ・ウカシェヴィチ、ドロタ・リズ
(2011年 ポーランド/スウェーデン 96分)
原題:THE MILL & THE CROSS

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
16世紀、朝を迎えたフランドル地方アントウェルペンで、
画家のブリューゲル(ルトガー・ハウアー)は、スケッチブックを持って家から出る。
村の高台にある風車小屋も少しずつ回転を始め、
農民たちはいつものように仕事に取り掛かるのだった。
だが、そんな平和な風景も、馬を駆ってやって来た赤い服装の兵士たちが現われたことによって暗転する。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

「絵画が動き出す」 こういった趣向が好みなので、楽しみにしていました。
実際にロケした風景とキャンバスに描かれた背景画の映像、別撮りした俳優達の映像、
それら3つを組み合わせてつくられた映像は、私には面白かったです。

ブリューゲルと言えば「雪中の狩人」が一番有名なのではないでしょうか。
kariudo
NHKBSプレミアム“額縁をくぐって物語の中へ”でも、この絵画は取り上げられていました。

この画家が描いたものは、農民等の民衆の生活、またそれらと風景との融合といった印象が強いのですが、
今回のテーマは「十字架を担うキリスト」です。
christ
古典神話や聖書の物語を題材にした絵画の中の一つみたいです。勉強になるなぁ。

当時(16世紀)のフランドル地方の人々の生活が、絵をなぞるように描かれていきます。
絵の中でひときわ高い場所にある風車。映画の中では、巨大な洞窟のような岩の中が粉引小屋になっていて、
その中に気が遠くなるような長い階段があり、その天辺で風車が回っているという映像になっていました。
この映像、実に迫力があって圧倒されます。

草原には牛をつれた夫婦やパン売りなどがいて、なごやかな雰囲気につつまれていたのですが、
突然現れたスペイン兵に夫がつかまってからは、映画の雰囲気がガラリと変わります。
そういえば、ここまではほとんど(全く?)セリフもなく、聴こえてくるのは虫の羽音や牛の鳴き声、
子供達のはしゃぐ声や風車の音といった、生活音だけでした。

ここで異教徒(夫)を処刑するスペイン兵達は、絵の中ではキリストを処刑する人です。
当時のスペイン兵の暴虐を非難しているとも捉えられますね。

公式サイトではこの絵について「フランドルの風景の中に、
聖書の物語とフランドルの風習をミックスして描いている」とありますが、
映画もフランドルの人たちの当時の服装や風俗を再現しながら、、
同時にゴルゴダの丘へ向かうキリストのお話も語られているのです。

マリア役でシャーロット・ランプリングが登場してたのは嬉しかったけど、
聖書の物語よりもこの時代の民衆の生活の方に興味がある私としては、
後半はちょっと長く感じられました。前半は良かったんですけどね。

やはり、セリフがオランダ語かフランス語でなかったのは残念。
ルトガー・ハウアーはオランダ人やし、シャーロット・ランプリングはフランス語もいけるのに。。。。
監督はポーランドの人なんですね。色んな事情があるのかな。

府立図書館では扱ってないみたい↓ ジュンク堂でちょっと読んでみよう。

ブリューゲル探訪―民衆文化のエネルギーブリューゲル探訪―民衆文化のエネルギー
(2008/03)
森 洋子

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シネ・ヌーヴォにて鑑賞。