ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「ラビット・ホール」 〜地味ながらも良作〜

RABBIT HOLE

公式サイト:http://www.rabbit-hole.jp/音が出ます!

監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
原作・脚本:デヴィッド・リンゼイ=アベアー
製作:ニコール・キッドマン
(2010年 アメリカ 83分)
原題:RABBIT HOLE

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
郊外に暮らすベッカ(ニコール・キッドマン)とハウィー(アーロン・エッカート)夫妻は、
愛する息子を交通事故で失った悲しみから立ち直れず、夫婦の関係もぎこちなくなっていた。
そんなある日、ベッカは息子の命を奪ったティーンエイジャーの少年と遭遇し、
たびたび会うようになる。(シネマトゥデイより転記させていただきました)

ニコール・キッドマンという人は見た目と雰囲気が、正直好きになれないんですが、
「誘う女」「アザーズ」「めぐりあう時間たち」等、時々面白い映画に出ていて
上手い人だなぁと思う女優さんの一人です。

子供を亡くした夫婦の喪失感という重いテーマを扱いながらも、
見る側に圧迫感を与えるような重苦しさや、仰々しさはありません。
ショッキングな事故のシーン等はあえて省かれているようで、
日々を過ごす夫婦の様子が淡々と映し出されていて好感が持てます。

そんな中、登場人物それぞれの心情が丁寧かつ繊細に描いていて、
彼等の心の揺れが、見ている側に無理なく伝わってきます。
(中盤、夫婦が気持ちをぶちまけ大喧嘩となるところが唯一、激しいシーン)

ベッカとその家族の間にも様々な葛藤があるようで、
ボウリング場での妹へのプレゼントをめぐってのひと悶着などは、
「あ〜なんかわかる…」と思ってしまいました。誰も悪くないんやけど、人間関係って難しいですね。

ベッカとアーロンは、子供を亡くした夫婦が集まるグループセラピーのような会に参加するのですが、
子供を亡くした事に神のおぼしめしといった解釈をつける別の夫婦の発言に、ベッカは苛立ちます。
彼女の気持ちもよくわかるんですが、ここでそれに直接反論するのはルール違反ですよね。

また、少しでも良い方向へと願う夫に対し、「悪いけど、もう何も良くならないの」なんて
身も蓋もない事を言ってしまったり、スーパーマーケットで見知らぬ母親に八つ当たりしたり、
イライラの範疇を超えて、制御のきかない状態に陥っているように見えるベッカですが、
なぜか加害者(ある意味被害者とも言える)の少年とは、素直に接しているのです。

しかーし、悲しみにさいなまれながらもベッカは家事をきちんとこなし、日常の主婦業の
手は抜いていない様子。こういう所は尊敬できるし、完璧主義らしい彼女の性格も見えてきます。
彼女の母親が少々ルーズで細かなところに頓着しない雰囲気なのとは、対照的です。

そんな母親に娘は「悲しみは消える?」とたずねます。
それに対する母親の答えが良いですね。ダイアン・ウィーストの静かな演技も素晴らしい。

ベッカが少年と過ごすベンチのある公園が、とても綺麗で印象に残っています。
そうそう、犬はちゃんと躾けないとダメですよ、絶対。それが事故の原因でもあるんやし。
ヒール(つけ)もちゃんと躾けられてない、あの夫婦はいくら上品で経済的に豊かでも、ダメダメです。
(結局それかっ!と言われそうですが)

シネ・リーブル梅田にて鑑賞。