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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「エンディングノート」 〜人それぞれのメメント・モリ〜

ending

公式サイト:http://www.ending-note.com/音が出ます!

監督:砂田麻美
プロデューサー・製作:是枝裕和
音楽:ハナレグミ
(2011年 日本)

※ネタバレ含みます。

【作品について】
“会社命”の熱血サラリーマン、砂田知昭さんは
定年退職後、第二の人生を謳歌し始めた矢先に、末期の胃がんと告げられる。
“段取り命”の彼がまず取り組んだのは、エンディングノートづくりだった。
そんな砂田さんの、最後の日々を追いかけたドキュメンタリー映画。

“死”に直面するという重いテーマを、明るく軽快に描いておられ、時折笑いを誘います。
「終活に大忙し」な父親の様子を、父いわく「段取り悪く生まれた娘」である監督がずっと取り続け、
その映像を元に、後々映画としてつくりあげた作品です。

冒頭から「わたくしごとで恐縮ですが」と始まるこの映画、“わたくしごと”を素材にしつつ、
セルフ・ドキュメンタリーといったモノに対するイメージを覆すような、
エンターテインメント性も感じられるような作品に仕上がっています。

「家族の絆を娘が描いた」と予告編のナレーションにありますが、
泣かせようという演出などは一切ありません。
それでも、泣いてしまうんですけどね。泣き笑いですよー、もう。

監督は、是枝裕和作品の助監督をされていた砂田麻美さん。
このチームのスタッフだった西川美和監督に続き、是枝監督の周りからは
才能ある女性監督が生まれますね。

いろんな条件が重なって出来上がった、奇跡的な作品と言えるかもしれません。
カメラに興味を持つ次女(監督)が昔からビデオを回しているので、過去の映像(素材)が残っている事や、
普段から家の中でカメラを回されているせいか、家族がカメラをあまり意識していない事。
父親が死に直面し、残された家族の為に段取りをつけておく作業を最後まで前向きに行っている事。
そして、病院による緩和ケア(※)が比較的上手くいったように思える事などです。
もちろん、監督自身とお父様のユーモアのセンスも大きな要素ではあると思うのですが。

エンディングノート作りと同時に、生前にやっておくべき事も次々とこなしていく砂田さんですが、
一つ目の“To do”として取り上げたのが「神父を訪ねる」です。
家からも近い四ツ谷の聖イグナチオ教会で葬儀を行う為に、洗礼を受ける相談に行くのです。
ご自身でも言ってはりましたが、客観的に見ても熱心にキリスト教に入信したいという感じではないようです。
この教会で葬儀を行いたい理由としていくつか挙げられた中で、印象的だったのが、
「コストが安くすみそう・シンプルだから」という事です。確かにー!
仏教のお葬式とかって、何かとややこしそうですよね。
いい戒名やったら幾ら云々とか、お布施の相場がいくらとか、正直、わけわかりません。

さて、とうとう具合が悪くなって病院に運ばれた砂田さん。最後まで生きるエネルギーを感じさせられます。
最後の最後に、枕元で長男が細かい段取りを確認している姿が、血筋を受け継いでるなぁと
なんか笑ってしまいました。そんな長男に対し「わからない事があったら携帯に」と返す父親もすごいけど。
この後の夫婦の会話といい、この家族には“愛”があるから、見ていて胸が熱くなるんですね。

“死”を意識することで“生”がみえてくる。どう生きていこうか、考えるきっかけになるかもしれません。

※「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、
痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、
的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、
和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである。」
(日本ホスピス緩和ケア協会HPより)

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。