ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

三大映画祭週間2011 その1「夏の終止符」

公式サイト:http://sandaifestival.jp/index.html

summer

監督・脚本:アレクセイ・ポポグレブスキー
(2010年 ロシア 124分)
英題:HOW I ENDED THIS SUMMER

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ロシア北極圏の孤島、気象観測所で働くセルゲイとパベルの仕事は、
測定した放射能のデータを定期的に本庁に通信することだった。
ある日、鱒釣りに出かけたセルゲイに観測をまかされたパベルだったが…。

「夏の終止符」という、まるで“ひと夏の恋”を想像させるようなロマンチックなタイトルなんですが、
どっこい「氷で閉ざされた僻地で職務にあたる男二人」という地味な設定。
まるで静止画のような海の映像から始まるこの映画、とにかくロケーションがすごくて圧倒されます。
空や海の段々変化していく色彩や、霧が晴れていく様子が美しいんです。

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HPによるとパベルは「夏を観測所で過ごす事を申請してきた新人」なんですね。
なんだかお気楽な態度やなぁと思いましたが、ひと夏のアルバイトのようです。

燃料を調達しに行ったバラックの近くでも、ドラム缶に飛び移ったりウサギを追いかけたり、
なんだかお子様気分・遊び気分が抜けきらない様子です。
常に音楽プレイヤーを携帯し、TVゲーム(どうやら放射能で汚染された世界で生き残るゲームらしい)に
興じる現代の若者像といったところでしょうか。。

それにくわえ、彼は人とのコミュニケーションを取るのが苦手なようです。
長年この場所で働くベテランのセルゲイに対し、ちゃんと話をする事ができないんですね。
その場限りのウソをつき、ぐずぐずしているうちに事が大きくなってしまいます。

ちゃんと叱られ慣れていない子供が成長するとこんな感じになる恐れがあるかも。
にしても、セルゲイを恐れる様子はちょっと異常です。逃げる為にそんな危険をおかすとは。
普通に説明したらいいのに、なんで?と何度も思ってしまいました。

そんなウルトラヘタレなパベルを演じている方が、すごく上手くて真に迫ってます。
また、セルゲイ役の俳優さんも、荒っぽいけど父性を感じさせる演技で味がありましたね。
パベルが遊んでいたサバイバルゲームが現実になる、そんな展開が意外でしたが、
緊張感のある124分でした。ちょっと長かったかな。

映画の中で、放射線量が4000ミリなんとか(シーベルトではなかったと思うのですが)という
なんだかとても危険な数値っぽい場所(噴出し口)があるのですが、これが謎でした。
最後の方で、放射能を示すハザードシンボルのついた物体が運ばれるショットが登場するので、
この辺に使用済み核燃料を廃棄してるという事なんでしょうか? 

映画の後半、寒さで朦朧としたパベルが暖をとるためか、放射線量が異常に高いこのに身を寄せる
場面には驚きました。もしかして汚染された魚を食べ続け、セルゲイの家族に不幸が訪れたのでしょうか。
この危険な状況について映画の中で説明はなかった(と思う)し、この作品は放射能の危険性を
訴えるものではないと思いますが、なんだかタイムリーで非常に気になるシークエンスでした。

テアトル梅田にて鑑賞。