ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「おじいさんと草原の小学校」 〜“あきらめない”ということ〜

THE FIRST GRADER

公式サイト:http://84-guinness.com/

監督:ジャスティン・チャドウィック
脚本:アン・ピーコック、リチャード・ハーディング、サム・フォイアー、デヴィッド・M・トンプソン
製作総指揮:ジョー・オッペンハイマー、アナント・シン、ノーマン・メリー、ヘレナ・スプリング
共同プロデューサー:トレヴァー・イングマン
撮影:ロブ・ハーディ
プロダクションデザイン:ヴィットリア・ソグノ
編集:ポール・ナイト
衣裳:ソフィー・オプリサノ
音楽:アレックス・ヘッフェス
(2010年 イギリス製作 103分)
原題:THE FIRST GRADER

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
イギリスの植民地支配から独立して39年後の2003年、ケニア政府は無償教育制度を導入。
何百人もの子どもたちであふれる小学校を、それまで教育を受ける機会がなかった
84歳の老人マルゲ(オリヴァー・リトンド)が訪れる。
文字を読みたい一心で、何度も門前払いされてもあきらめない彼の熱意に動かされた
校長ジェーン(ナオミ・ハリス)は、周囲の反対を押し切ってマルゲの入学を認めるが…。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

20世紀後半以降のアフリカといえば、数多くの紛争とその残虐性・悲惨さがまず頭に浮かぶのは
それらを題材にしたいくつかの映画もせいかもしれません。

この映画は、そんな時代より少し前1950年代のケニアでマウマウ団として活動していた主人公のお話。
実在の人物がモデルとなっています。
当時のマウマウ団のイギリスへの抵抗運動が、後の独立運動のきっかけにもなったようです。

祖国解放の為マウマウ団としての活動に身を投じたマルゲは、妻子を目の前で殺害され、
投獄されて拷問を受けるという過去を持つため、大きなトラウマを抱えています。

このマルゲの回想シーンは、正直見ているのがちょっと辛いです。

『ケニアの元マウマウ団戦士、植民地時代の「拷問」で英政府を提訴』という2009年の
ニュース記事によると、植民地政府軍による拷問に関する記述は目を覆いたくなるようなものです。
性的暴行を受けた上身体の一部を切断された女性や、ペンチで去勢された上暴行を受けた男性等。
一方、こういう題材で映画を作ってしまうイギリスという国もたくましいというか何というか。

結局、1963年に英連邦王国として独立したケニアですが、そこにはまだまだ問題が山積みされているようです。
他のアフリカ諸国と同様、いやケニアはおそらくまだマシな方だと思うのですが、
汚職・賄賂が蔓延している様子は、映画の中からもうかがえます。
こういった途上国政府が腐敗してしまう原因は何なんでしょうね。
素人の私が考えてもなかなか難しいんですが、より良い社会を作るためには
“教育”というのは大きな要素である事に間違いはないと思います。

この映画の中の教室、授業の様子はとても楽しそうで、子供達のイキイキとした表情と
キラキラした瞳を見ていると“学ぶ喜び”というものが、自分の中で蘇ってくるようです。
そして、子供達以上に楽しそうだったのはマルゲです。
いくつになっても、決して人生をあきらめない。困難に立ち向かうその姿勢は、
かつて戦士だった若い頃の姿と重なります。

やっぱヘタレではあかんなぁ〜、ガンバロッ!

テアトル梅田にて鑑賞。