ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「大鹿村騒動記」 〜今日と言う日に、泣き笑い〜

公式サイト:http://ohshika-movie.com/

Ohshika

監督・脚本・企画:阪本順治
脚本:荒井晴彦
原案:延江浩
主題歌:忌野清志郎

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
南アルプスのふもとにある長野県大鹿村でシカ料理店を営む風祭善(原田芳雄)は、
300年以上の歴史を持つ村歌舞伎の花形役者。
公演を間近に控えたある日、18年前に駆け落ちした妻・貴子(大楠道代)と
幼なじみの治(岸部一徳)が現れる。
脳に疾患を抱え記憶を失いつつある貴子をいきなり返され戸惑う善だったが…
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

私が村歌舞伎の存在を始めて知ったのは「Beauty うつくしいもの」で、舞台は
長野県伊那路村とありましたが、今作品と同じ長野県下伊那郡大鹿村の事だと思われます。
そういえば、長老(三國連太郎)がシベリアでの過去を語っていましたが、
「Beauty〜」においても、主役二人の強制収容所でのシークエンスがあったので、
この地域から出征した人達は、シベリアに抑留された方が多かったのかもしれませんね。
気になるところです。

「Beauty〜」は、片岡孝太郎さん、片岡愛之助さんの踊りが素晴らしかったのですが、
ストーリーそのものは、少々まとまりにかける部分が感じられた作品でした。

一方今作品は、少々泥臭く素朴で、でも村人の歌舞伎に対する熱意や愛情が伝わってくるような、
いい意味で素人っぽさの感じられる舞台でした。
映画そのものは、ちょっとユルめなコメディで、良い作品です。

とにかく笑わせてもらいましたよー。笑いながらも、原田芳雄さんのアップが映ると
ちょっと涙目になってしまいますが。
今日、その訃報に驚きながらも最後の作品を見るという、不思議な感覚でした。

原田さんは、色気を感じさせる数少ない日本人俳優の一人でした。
渋好み・爺さん好みの私は、思春期から好きな俳優さんで、
なんと言っても“声”がヨロシイ。故・松田優作さんと共に声が素敵すぎる二人でしたね。

岸部一徳さんも、相変わらずボケたキャラクターで笑わせてくれます。
台風の強風に煽られ後退する様子なんかは、もう名人芸の粋では?
「世田谷、難しいです」も、笑った〜。

三國連太郎さん、原田さん、岸部さんの会話のシーンも良いなぁ。
ある意味、俳優まかせで成り立ってる感じもする映画です。

石橋蓮司大楠道代松たか子、佐藤浩市と安心して見られる俳優さん達の中で、
ライオン役、冨浦智嗣さんがちょっと浮いてたかな。瑛太さんに助けられてた感じです。

劇中での歌舞伎「六千両後日之文章(ろくせんりょうごじつのぶんしょう)」は、
大鹿歌舞伎にだけ伝わる演目という事です。
景清が「仇も恨みもこれまで」と言い頭を下げる場面は、善さんの姿と重なり印象に残ります。
まるで原田芳雄さん最後の作品という事を意識してつくったかのような、そんな映画でした。

沢山の方が鑑賞されていたようで喜ばしいことですが、マナーの悪さが目立ったのは残念。
特に、隣の席の方の携帯電話(呼出音)が2度も鳴ったのには、ちょっとビックリしてしまいました。

梅田ブルク7にて鑑賞。