ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「引き裂かれた女」 〜もう少しシャブロルを見てみたくなる〜

公式サイト:http://www.eiganokuni.com/hiki/

hikisaku

監督:クロード・シャブロル
脚本:セシル・メストル
製作総指揮:フランソワーズ・ガルフレ
音楽:マチュー・シャブロル
(2007年 フランス)
原題:LA FILLE COUPEE EN DEUX

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ローカルテレビ局のお天気キャスター、ガブリエル(リュディヴィーヌ・サニエ)は
番組出演を機に知り合った初老の作家シャルル(フランソワ・ベルレアン)と恋に落ちる。
一方、多額の資産を持つポール(ブノワ・マジメル)からも強引に言い寄られるが、
彼女は相手にしなかった。(シネマトゥデイより転記させていただきました)

クロード・シャブロルという人、実はそれ程好きという訳でもなかったんです。
なんていうか、後味の良くない感じがちょっと受け入れ難い雰囲気というか。
なるべく、これまで同監督に持った印象とは距離を置いた視点で鑑賞したつもりですが、
結果としては、ひょっとして、案外、好きかもしれない♪〜という感想です。

「美しきセルジュ」(1958年)・「いとこ同志」(1959年)・「気のいい女たち」(1960年)・
パリところどころ(オムニバス)」(1965年)・「主婦マリーがしたこと」(1988年)と
見た事を覚えている作品を並べてみても、かなり年代が偏っているし、
私の中ですっぽり抜け落ちてる1970年代〜の作品は好みかもしれないと、
今週末から同じ劇場で上映される“シャブロル未公開傑作選”の前売券、さっそく購入。

さて今作品ですが、物語自体は20世紀初頭にアメリカで起きた“スタンフォード・ホワイト殺害事件”を
ベースにしているらしいので、三面記事的な男女間の痴情のもつれなんですが、
こういう話の割に、映像の中で事が淡々と運んでいくのが良いですね。
露骨な性描写が無いのも好ましい。その方が想像力が働いて楽しいし、断然洒落てます。

シリアスな話の中にも、クスッと笑える所もありますし、皮肉っぽさも。
ポールの家族は、母親をはじめなんか空恐ろしいし、シャルルと妻とシャルルの秘書の関係も怪しすぎる。
精神的に問題を抱えているポールのちょっと滑稽で痛々しい感じが、あの変な髪型やファッションや
歩き方以上に、ブノワ・マジメルの演技力により上手〜く表現されてます。

また、これまではあまり魅力を感じなかったリュディヴィーヌ・サニエですが、今回はハマリ役かも。
最初のちょっとオバカっぽい媚びた微笑(TV用というか営業用というか)も、彼女らしくて良いです。
結局、引き裂かれたようで、引き裂かれてないんですね、彼女。
それまでの映像とは別世界のようなラストシーンも、結構好きです。

十三 第七藝術劇場にて鑑賞。