ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「プッチーニの愛人」 〜映画の可能性〜

公式サイト:http://puccininoaijin.com/

puccini

監督:パオロ・ベンヴェヌーティ
共同監督:パオラ・バローニ
(2008年 イタリア)
原題:PUCCINI E LA FANCIULLA

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
1909年、イタリア・トスカーナ地方の湖畔の景勝地トーレ・デル・ラーゴ。すでに作曲家として
世界的に高い評価を得ていたプッチーニは、新たなオペラ『西部の娘』に取り組んでいた。
作曲が行き詰まると、湖上に建つ酒場に通っては気分転換を図り、リフレッシュ後、
再び作曲に戻るという日々を送っていたプッチーニ
そんなある日、その静穏を破る事件が起こる。
メイドとして働いていたドーリア・マンフレーディが、自殺を図ったのだ。
(公式HPより転記させていただきました)

プッチーニとは、数多くの浮き名を流した人物だったのですね。
そういう人の妻がこういう嫉妬深く攻撃的な性格やと、回りは迷惑しますよ、ホント。

彼の妻エルヴィーラは、人妻(子持ち)の状態でプッチーニと駆け落ちしたので、
この映画に登場するフォスカ(最初の登場シーンが裸!)は、エルヴィーラの連れ子という事になります。
なるほど、フォスカの夫が妻の不貞をなじる手紙に「この母にしてこの子あり」とあったのは
こういう事を指しているのかと納得がいきました。こういう激しい性格の人、疲れる。。。。

そんな母娘とは対照的に、トーレ・デル・ラーゴの湖畔の景色はどこまでも静かでおだやかです。
この作品では、セリフがほどんど存在せず(覚えている限りではエルヴィーラのけたたましい声くらい)、
登場人物の仕草や手紙を朗読する声が、物語の語り手とでも言う存在です。
静かで美しい映像に、自然界がかもし出す音とピアノの旋律がなんとも心地よい作品です。

暗い屋敷の中に徐々に光が差し込む冒頭のシーンから、作品全体を通し光と影が効果的に使われ、
影絵のようなシーンも強い記憶を残します。
先月見た「四つのいのち」と同様、映画の持つ新しい可能性のようなものを感じさせます。

映画の公式HPや、プッチーニの生涯を記した記事を読んでいると、
死後、自身の純潔が証明されたドーリア。彼女の家族はエルヴィーラを訴え、彼女は有罪になり、
結局、プッチーニが示談金を払ったという事です。

この時代の乙女、しかも何の権力も持たない家の娘は泣き寝入りするしかなかったんかなぁ。
それにしても理解できないのは、自分のパートナーを恨むのでは無く、その浮気相手を
憎むという女性の心理です。元もとの原因はパートナー自身にあるのにね。

プッチーニが当時つきあっていた女性は、酒場を経営する家のジュリア・マンフレーディで、
ここに登場するメイド・ドーリアの従姉妹であるという話が、公式HPでも紹介されています。
映画の中では、湖上の酒場で歌っていたあの女性でしょうか。
ドーリアは当然二人の仲を知っていたでしょうが、家名を守る為に沈黙を守っていたのかもしれませんね。

シネマート心斎橋にて鑑賞。