ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」 〜静寂と狂気のコントラスト〜

公式サイト:http://www.ainoshouri.com/

VINCERE

監督・脚本:マルコ・ベロッキオ
編集:フランチェスカ・カルヴェリ
音楽:カルロ・クリヴェッリ
(2009年 イタリア)
原題:VINCERE

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
若きベニート・ムッソリーニ(フィリッポ・ティーミ)と恋に落ちたイーダ(ジョヴァンナ・メッツォジョルノ)は、
自分のすべての財産を投げ打ってまで彼の理想を実現させようと支える。
やがてイーダは彼の子どもを産むが、ムッソリーニはすでに家庭を持っていたことを知る。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

自分はムッソリーニの妻であり、息子はムッソリーニの長男である!
その事を主張するイーダのエネルギーがスゴすぎる〜。
彼女の、権力に抵抗し妥協しない、毅然とした強さには敬服します。
ただ、最初は“愛”だったとしても、それはすでに“執着”へと変わっていたのでは
という印象を、私は受けたのですが。

主役のジョヴァンナ・メッツォジョルノは、大変魅力的な女優さんですね。目力がすごい。
男性を振り回す悪女の役なんかがピッタリきそう、そんな雰囲気を持ってはります。
「コレラの時代の愛」(2007年)のヒロイン役は彼女やったんですねー。あまり印象に残ってないのが不思議。
当時は私、彼女よりも脇役のカタリーナ・サンディノ・モレノに注目してたみたいですし。

とても印象的なシーンが2つあります。
イーダが、病院で上映されたチャップリンの“キッド”を見て感情を素直に出す場面。
そして、病院の高い格子窓越しに見える夜の雪の場面です。
特にこの雪のシーンは、イーダにほんの一瞬の心の平安を与えたのでは?と
思えるほど、息を呑むような美しさがありました。
これらの美しい映像と、イーダの狂気を感じるほどの熱情と目の光が
いつまでも脳裏に残ります。

当時のニュース映像も折り込みながら、イタリアがファシズムへの道を歩む事になる様子が描かれますが、
実際のムッソリーニの演説の様子を見ると、なんだかとても滑稽に思えてしまいます。

また、ニュース映像ではありませんが、ムッソリーニのこんなセリフがありました。
「道徳こそ宿敵だ」「機関銃の銃声は、心が躍る」「外国勢を駆逐せよ」
これも今聴くと、なんだかなぁ〜。すごく幼稚な発言に思えてしまいますよね。

劇中では、息子ベニートが周りに催促され父ムッソリーニの真似をする様子、
これらを演じたフィリッポ・ティーミの演技にも鬼気迫るものがあり、怖いです。

シネマート心斎橋にて鑑賞。