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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「光のほうへ」 〜ニックの優しさとマーティンの愛くるしさ〜

映画 は行

公式サイト:http://www.bitters.co.jp/hikari/音が出ます!

submarino

監督・脚本:トマス・ヴィンターベア
原作:ヨナス・T・ベングトソン
脚本:トビアス・リンホルム
撮影:シャルロッテ・ブルース・クリステンセン
(2010年 デンマーク)
原題:SUBMARINO

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
10代のころに幼い弟を亡くし、心に深い傷を負ったまま大人になった兄弟。
アルコール依存症の母親のもとで悲惨な子ども時代を過ごし、
人を愛するすべも愛されるすべも知らずに育った彼らは、
互いにかかわることなく別々の人生を送っていた。
それぞれに怒りやかなしみ、苦悩を抱えて生きてきた兄弟は母親の死をきっかけに再会し、
再び気持ちを通わせようとするが…(シネマトゥデイより転記させていただきました)

近年のデンマーク映画が語られる時に、度々登場する言葉“ドグマ95”。
その第1回作品がトマス・ヴィンターベア監督の「セレブレーション」(1998年)らしいんですが、
撮影当時、監督はまだ20代という若さだったんですね。
今回初めて同監督の作品を見たんですが、強く惹かれるものがありました。
「セレブレーション」も見なくては〜という気持ちです、今は。

ラース・フォン・トリアー(ダンサー・イン・ザ・ダーク)、スザンネ・ビア(ある愛の風景)といった、
重苦しいテーマを撮るデンマーク出身の監督と、なんとなくイメージがかぶってしまうほど、
作品のトーンは暗いです。暗いんですが、空気が澄んだ感じというか、
何か凛としたモノが感じられる、そんな感覚が残ります。
また、最後には一筋の希望の光が見え、救われた気分で映画館を後にしました。

デンマークは「“国民の幸福度ランキング”が世界一の国」というイメージ。
家具や照明、ファッションにいたるまで美しいデザインが誕生する歴史ある王国で、
教育水準が高く、福祉がすごく充実していて、原子力発電に依存せずクリーンエネルギーを推進し、と
なんとも進んだうらやましい国という感じなんですが、やはりどこの社会にも問題はあるわけで。。。。

ここには、社会の底辺でもがき苦しむ人たちが登場します。

兄は愛した人と結ばれることができず、うつろな日々を過ごし、
弟は息子を深く愛しながらも、正しく生きることができない、
愛する術を学ぶことを親から受けなかった二人の葛藤が描かれています。

シェルターと呼ばれる施設で暮らす、子供と引き離された女性にはどんな過去があったのかも気になります。
優しさを感じさせる彼女もまた、愛する気持ちを持ちながらも社会に順応していけない不器用な人に見えます。

先日「メアリー&マックス」を観た時も漠然と感じたのですが、
人の心の中で複雑に絡み合った問題を、他者が理解することは難しいやろなぁという事です。
多種多様な人が暮らしやすい、そんな成熟した社会に向けて進化してく事が重要なのかもしれません。

幼い兄弟がシーツの中で洗礼をまね、弟に名前を授けるシーンが最初と最後に出てきまが、
ここは眩い光に満ちています。ラストにこのシーンを持ってくる構成が上手いし、泣かせます。

ちなみに、原題の“SUBMARINO(潜水艦)”ですが、
監督いわく「“SUBMARINO”とは、水の中に無理やり頭を沈められるという刑罰の名前です」との事。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。