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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「悲しみのミルク」 〜土の匂いのする映像〜

LATETA ASUSTADA01

公式サイト:http://www.kanashimino-milk.jp/

監督・脚本・製作:クラウディア・リョサ
製作:アントニオ・カバリアス、ホセ・マリア・モラレス
撮影監督:ナターシャ・ブライエ
美術監督:パトリシア・ブエノ、スサナ・トレス
編集:フランク・グティエレス
音楽:セルマ・ムタル
原題:LA TETA ASUSTADA

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
母親を失った若い娘ファウスタ(マガリ・ソリエル)。
母乳を通して母の体験した苦しみを受け継ぐ病、「恐乳病」に侵されていると信じるファウスタは、
男たちから身を守るためにじゃがいもを体の奥にひそませていた。
母の埋葬のためにピアニストの屋敷で働いているファウスタだったが、
ある日ファウスタの口ずさむ歌が雇い主の心をとらえる。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

1980年代のペルーでは毛沢東主義センデロ・ルミノソが、農村を拠点にテロの恐怖により勢力を広げ、
無差別機銃掃射や、拉致行為を行った。
また、軍・警察から成る治安部隊による大規模な人権侵害も行われ、
センデロ・ルミノソを支持していると疑われた農村で暴行、拷問、強姦、強奪、
および女性や子供も含めた虐殺が頻繁に行なわれた。

こういう時代背景を頭に入れておいた方が、すんなり話が頭に入ってきやすいと思います。

ファウスタの母は、この時代に男達から陵辱された悲惨な記憶を歌にして口ずさみます。
そして、母の歌により恐怖の記憶は、娘ファウスタに受け継がれるのです。
ファウスタは時々鼻血を流して気を失ういますが、これが
母親の恐怖が母乳を通じて子供に伝染するという“恐乳病”と信じられているというお話。

悲惨な歴史と現実がそこにあるのに、なんだかふんわりとした可笑し味がある不思議な作品です。
結婚式と披露宴等は、映画で見る中東のソレと共通したものを感じました。
やけに、明るくてハデハデしいんです。演出や小道具等も。
ソフィスケートされていないのが、良いですね。
貧しい暮らしの中にあっても、そういう時にはファウスタもちゃんとヒラヒラのドレスを
着ているのがちょっと不思議やし。

映像が良いなぁ〜と思っていたら、撮影は「シルビアのいる街で」のナターシャ・ブレイアです。
素材が異なっていますが、どちらの作品からも、何か手のぬくもりのようなものが感じられます。

さて、ファウスタが口ずさむ歌は、勤め先であるお屋敷のピアニストによって
花ひらくわけですが、何か誇らしげなファウスタに対し、ピアニストは後ろめたさもあってか
きわめて冷淡に彼女に当たります。このあたりが、面白いですね。
ちにみにこの土着的な歌そのものは、私にはさほど魅力的ではありませんでした。
「チャンドマニ」に登場するモンゴルのオルティン・ドーと哀惜を感じさせるという点では似ていますが、
オルティン・ドーはもっともっと素晴らしかったので。

叔父の言葉と庭師の思いやりにより変化していくファウスタの表情からは希望が感じら、
結果的にはそう暗くない映画だと思います。
にしても、いきなり気絶したらめちゃくちゃ無防備で、かえって危ないよなぁと
ずっと思っていた私は、現実的すぎるのかもしれません。

十三 第七藝術劇場にて鑑賞。