ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「SOMEWHERE」 〜“気づき”の映画〜

公式サイト:http://www.somewhere-movie.jp/index.html

SOMEWHERE

監督・脚本・製作:ソフィア・コッポラ
製作:G・マック・ブラウン、ロマン・コッポラ
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ、ポール・ラッサム、フレッド・ルース
撮影監督:ハリス・サヴィデス
プロダクション・デザイン:アン・ロス
編集:サラ・フラック
衣装デザイン:ステイシー・バタット
音楽:フェニックス

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
ロサンゼルスのホテルで派手な暮らしを送る
ハリウッド・スターのジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)だが、
別れた妻のもとで暮らしていた11歳の娘クレオエル・ファニング)を
しばらくの間、預かることになる。
騒々しい日常は一転、クレオとの楽しく穏やかな日々が過ぎていく。
そして、再び離れ離れになる日が訪れるが…。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

冒頭(タイトルが出る前)のシーンだけで、ジョニー・マルコの空虚な生活を表現しちゃってます。
こういう見せ方、上手いナァと思う。これだけでも良かったんじゃないでしょうか。

その後のパーティでのバカ騒ぎとか、ホテルの部屋にポールダンサー(ダンサーが
地味に下手なところが悲しさを倍増させるわ)を呼んで眺めてる場面とかは、
サービス過剰な感じがします。この方がわかりやすいのかもしれないし、
滑稽で面白いんですが、アホで程度が低い場面を延々と見せられるのは、ちょっとしんどいから。

車のマフラー音があれだけうるさい時点でアウトですよ、人として。
だいたい、このマルコってヤツは、正しい薬の飲み方一つわかってないし、
パスタをまともに茹でる事もできない。生きる術を知らないまま歳をとったのでしょうか。

ところが彼の娘クレオは、朝からパパ達に食事を用意する良い子なんです。
「触ってもいいですか」とちゃんと飼い主に了承を得てから犬をなでるという常識もあるし。
↑これ、大人でもできていない人が結構いるんです。犬を散歩させていると色んな発見があります。
お母さんがちゃんと躾けてきたんやろなぁと想像したりします。

そんな娘に接して、今までごまかしてきた空虚な気持ちがあふれ出してしまうマルコ。
「オレは空っぽだ」という彼の言葉に、ハッと胸を突かれました。
自分の中に核となるものが無いなんて、想像しただけでなんて辛いんだろうと。
自分自身が何かを持っているかどうかは私にもわからないけれど、
自分が空っぽだなんて思った事はこれまでありませんでした。
たぶんお気楽なだけかもしれませんね。

今は漠然と自分自身を信じていても、最愛の人を亡くす等といった出来事によって
自分が空っぽだという感覚に陥る可能性は、大いにありえると思うのです。
それまで全く共感できなかったマルコに対して、心寄り添うことができた不思議な感覚でした。
こういう体験ができる作品には、かかわる価値があるなぁと実感します。

音楽の使い方が、やっぱりさりげなく上手いですね。
それと、ベニチオ・デル・トロ。登場シーンは一瞬やのに味のある顔は印象に残ります。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。