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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「わたしを離さないで」 〜キャスティングは完璧なんやけど〜

映画 わ行

公式サイト:http://movies.foxjapan.com/watahana/音が出ます!

NEVER LET ME GO

監督:マーク・ロマネク
原作:カズオ・イシグロ
(2010年 イギリス/アメリカ)
原題:NEVER LET ME GO

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
外界から隔絶された寄宿学校ヘールシャムで、幼いころから共に日々を過ごしてきた
キャシー(キャリー・マリガン)、ルース(キーラ・ナイトレイ)、
トミー(アンドリュー・ガーフィールド)。
普通の人とは違う“特別な存在”として生を受けたキャシーたちは、
18歳のときにヘールシャムを出て、農場のコテージで共同生活を始める。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

以前にもチラッと書きましたが、何年か前に原作を読んだ時は結構辛くて、
この先、この本を再び読む事は無いやろうなぁと思ってました。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
(2008/08/22)
カズオ・イシグロ

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しかし不思議なもので、映像化されたこの作品を見た今、読み直したい気持ちです。
こういう時、すぐ物を処分する自分がちょっと恨めしい。とっくにブックオフに売ってしまってるやん。トホホ

キャリー・マリガンの丸顔とやわらかい雰囲気が、おだやかで誠実なキャシーという人物設定に
うまく融合していて、この主人公には好感を持たずにはいられません。
逆に、気が強い反面脆さと危うさを感じさせるルースという役柄を演じたキーラ・ナイトレイは、
ちょとした嫌われ役を見事に演じているといった感じです。
フルバングだとキーラのしゃくれ顔が強調されてしまうせいか、彼女の美しさは封印された感があり
ヘアメイク+演技力の威力を再認識しました。

映画「プライドと偏見」では聡明なエリザベス役だったキーラと、いかにも考えなしの子供っぽい
キティを演じていたキャリー。姉妹役だった二人が同じ1985年生まれなのを今回初めて知りました。
役柄によってここまで印象が違うのは、さすがというか当然と言うべきなのか。

それから、アンドリュー・ガーフィールド! 原作から私が抱いていたトミー像とは少し違ったんですが、
映画をみている間にトミー=アンドリューになっているから不思議。
無垢でナイーブな人物像は、映画「BOY A」にも通じるものがあって
アンドリュー演じるトミーはとても魅力的でした。

そして、この3人の子供時代を演じた子役達が素晴らしい。
この子が成長するとこうなるやろなぁと納得させられる程、外見も似ているし
母性的なキャシー、勝気なルース、癇癪持ちでナイーヴなトミーといった
それぞれの性格も上手く表現されています。
特にキャシーの子供時代を演じた女の子は、彼女の持つちょっともっさりとした落ち着きのある
空気感みたいなものが、キャリー・マリガンと酷似していました。

この小さな頃のキャシーとトミーのシーンは、ヘールシャムの牧歌的な風景と共に
今後も記憶に残りそうな気がします。

けれども、何かしら薄ら寒いというか、少し上ずったような気持ちになってしまうのです。
原作を読んだ時も同じような印象を持ったのですが、この話の特殊な設定が
そういう気持ちにさせるのかどうかは、自分でもよくわかりません。
自分自身の運命を切り開く、そんなあきらめない強さをもつ登場人物が現れない事に
苛立ちを覚えるというか、どうしても納得できない気分にさせられるんですよね。

原作には出てこない手術のシーン、ルースの最後はあまりにも残酷でした。

結果としてはなんだかやりきれない気分にさせるのですが、
その映像の持つ力により心に足跡が残る、そんな感覚のする映画ではあります。
そう考えると、何も関わりも感じないまま忘れてしまうモノとは
一線を画す作品とも言えるかもしれません。

TOHOシネマズ なんばにて鑑賞。