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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「アンチクライスト」 〜痛すぎる映像。美と醜と〜

映画 あ行

ANTICHRIST01

公式サイト:http://www.antichrist.jp/

監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
製作:ミタ・ルイーズ・フォルデイガー
製作総指揮:ペーター・ガルデ、ペーター・オルベク・イェンセン、ベティーナ・ブロケンパー
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
編集:アナス・レフン、アサ・モスベルグ
(2009年 デンマーク/ドイツ/フランス/スウェーデン/イタリア/ポーランド)
原題:ANTICHRIST

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
愛し合っている最中に、息子がマンションの窓から転落し亡くなってしまった夫婦。
特に妻は葬儀の最中に気を失ってから一カ月近い入院を余儀なくされる。
深い悲しみと自責の念からしだいに神経を病んでいく妻。
セラピストの夫は自ら妻を治療しようと、病院を強引に退院させ自宅に連れて帰る。
催眠療法から、妻の恐怖は彼らが「エデン」と呼ぶ森の中の山小屋からきていると判断した夫は、
救いを求めて楽園であるはずのエデンにふたりで向かう。
夫は心理療法によって妻の恐怖を取り除こうと努力するが、
エデンの周りの自然の現象は彼らに恐怖を与え、
それも影響してか妻の精神状態は更に悪化していく。
現代のアダムとイブが、愛憎渦巻く葛藤の果てにたどりついた驚愕の結末とは・・・?
(公式HPより転記させていただきました)

かなり以前から何かと話題になっていたこの映画、ようやく上映されましたね。
なんか怖そうな作品で躊躇しつつ、ウィレム・デフォーが気になって見に行きました。

プロローグの映像の美しさは、ここのところの記憶にある中では一番。
ヘンデルのオペラ「リナルド」のアリア「私を泣かせてください」にのせて、
水滴や埃、雪の落ちる様子がハイスピードカメラによるスローモーションの
モノクロ映像で映し出されます。
そして、もうすぐ40才になろうとするシャルロット・ゲンズブールの表情は
まるで少女のよう。

ここまでは良かったんですけどこの後、実はちょっと眠気に襲われてしまいました。
セラピストの夫(ウィレム・デフォー)が、いかにもキリスト然として
妻を治してやる的態度なので、ちょっと退屈してしまったんです。

そんな支配的な夫も、第三章の殺戮(絶望)からは恐怖のどん底へ突き落とされるんです。
↑少しだけ「ほら見たことか」と思ってしまう私も、悪魔的な部分を内包している女性と
言えるかも。

しかし、ここからは見てるだけで“痛い”映像に眠気どころではなくなりました。
スプラッター・ホラーとかは避けてる私にとって、これはキツイ!です。
だいたい森になんて行ったら、なんか怖ろしい事が起きるに決まってますやん!
森には精霊や妖精等も存在するやろけど、殺人や虐殺の舞台にもしばしばなっているんやから。
それにしても、夫を捜す妻の様子は怖かった。シャルロットのこのショットも不気味。
ANTICHRIST02
性描写については、取り沙汰されていた程過激とは感じませんでした。
シャルロット・ゲンズブールという人には、昔から全くエロスを感じないんですよ、私。
なので、彼女の自慰行為のシーンも妙に厭らしさがなくて、痛々しい感じ。
むしろ、ボカシが多すぎて何がなんだかわからないという印象。

追い詰められた夫が星空を見て、そんな星座はないぞ的な事を言うシーンはちょっと笑ってしまいました。
ここで登場する三人の乞食(鹿、キツネ、カラス)は、新約聖書に出て来る三人の賢者を
皮肉ったものなんでしょうかね?! 欧米人の宗教観と私のソレとは根本的に違うので、
正直今ひとつピンとこないというか、見逃してる部分も多いと思います。
宗教的解釈が、この映画の“核”と言える部分のような気もします。

トリアー監督が自己満足するために撮った作品という印象は拭えません。後味悪いし。
同監督作品で唯一見た「ダンサー・イン・ザ・ダーク」も嫌いやし。
「ヨーロッパ」も「奇跡の海」も見ていないので、あまり多くは語れないんですが、
今回も好印象にはならなかったです。この人がタルコフスキー好きなのは、わかる気がしますが。

テアトル梅田にて鑑賞。