ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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「トスカーナの贋作」 〜キアロスタミのマジック〜

公式サイト:http://www.toscana-gansaku.com/音が出ます!

CERTIFIED COPY

監督・脚本:アッバス・キアロスタミ
撮影:ルカ・ビガッツィ
(2010年 フランス/イタリア)
原題:CERTIFIED COPY

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
執筆した本に関する講演の為、イタリア南トスカーナ地方を訪れた
イギリス人の作家(ウィリアム・シメル)は、この地で暮らす
フランス人女性(ジュリエット・ビノシュ)の招待を受け、彼女を訪ねる。

トスカーナで出逢ったはずの男女が、カフェの女主人に夫婦だと勘違いされた事から
結婚15年目を迎える夫婦を演じ。。。。
見ているうちに、本当のところ二人は夫婦では? いや、そんなはずはないし、と
わけがわからなくなってきます。私の理解力だからそう感じるのかもしれません。
なにしろ同監督作品「桜桃の味」を見た時も、主人公の男性がいったい何をしたいのか
さっぱりわからず、怪しい人やなーと中盤位まで思っていた程なので。

既成概念にとらわれ そこにこだわってしまうと、あまりこの映画は楽しめないので、
深く考える必要はきっとないでしょう。
この二人の夫婦関係は、原題にあるように“認証された贋作”と言えるのかも。

会話の洪水。二人の考え方の相違による言い合いは、途切れる事無く続きます。
しかし、しっくりきたのはむしろ、カフェの女主人の言葉や、通りすがりに声をかけた
男性のソレだったりします。

女性が息子を電話口で叱っている後ろから、次元の違う話を続けようとする男性の
行動は滑稽でもあり、夫に対し情熱を求める女性との立ち位置の違いというか、
男女間の相違みたいなものをこれでもか!と見せつけられます。

ウィリアム・シメル演じる作家は見た目ダンディでカッコいいんですけど、
大らかさのようなものが感じられないんで個人的には苦手なタイプです。
やたら哲学的に物事を語ろうとするところが、逆に浅く思えるというか。

先日みた「再会の食卓」と同様、男女の関係は様々やなぁと感じさせられます。

ビノシュ演じる女性が作家を迎える日、露出度の高いスリップドレス着てて
いかにも気合はいってるなぁという感じです。ずっと胸の谷間に目がいってしまいました。
レストランのバスルームで、鏡に向かって口紅を塗りイヤリングを選ぶ彼女の様子は
観客を鏡に見立てているような演出。
まるで“オリジナルとコピー”を示すかのように、この映画には鏡やガラスに映りこむ映像が
やたらと出てきます。そして、真実を表しているのは鏡に映った姿の方かもしれません。

何やらまた、キアロスタミにしてやられたという感じです。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。