ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「君を想って海をゆく」 〜難民問題について考える日〜

WELCOME01

公式サイト:http://www.welcome-movie.jp/音が出ます!

監督・脚本:フィリップ・リオレ
脚本:エマニュエル・クールコル / オリヴィエ・アダム
製作代表:クリストフ・ロシニョン
アソシエイトプロデューサー:フィリップ・ブァファール
エグゼクティブプロデューサー:エーヴ・マシュエル
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
撮影:ローラン・ダイヤン
(2009年 フランス)
原題:WELCOME

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
フランスの港町カレーにたどり着いたイラク国籍のクルド難民、
ビラル(フィラ・エヴェルディ)はイギリスへ密航しようとするも失敗。
恋人のいるロンドンへどうしても行きたいビラルは泳いで行こうと思いついたが、
偶然出会った水泳コーチのシモン(ヴァンサン・ランドン)は「無理だ」と一刀両断。
それでもビラルは練習を続け…。(シネマトゥデイより転記させていただきました)

“難民”とは「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、
自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人々と
定義されています。(国連難民高等弁務官事務所のHPより)

日本で生活していると考える機会が少ない気がしますが、
難民受入れの人数が多いフランスのような国にとっては、
この映画で描かれている事は身近な問題なんでしょうね。

舞台となったカレーには2009年現在で、野外に約1,600人の難民と移住者希望者がいるそうです。
また、その20%が子供達だという事で問題は深刻ですね。
とはいえ、もし自分がカレー市民やったら、それだけの難民が放置された状況に
どう向き合うんやろか。。。。そう考えれば複雑な思いです。

それにしても、強制送還する訳でもないが、人間扱いする訳でもないという
フランスのこの状況はやっぱり見ていて違和感があります。
それ以上に驚いたのは、そんな人達を支援する行動が罪に問われるという事。
慈善活動はきわめて人間らしい行動やのに、何かがおかしい。
日本は過去に、国連難民高等弁務官事務所難民認定した人を強制送還した事もありますし、
そんな国に住んでる者には、あんまり偉そうな事は言えない気もしますが。

この映画を見ると、なぜ難民はイギリスを目指すのかとか、
フランスにおける難民問題とか、色々なことをもっと知りたくなります。

さて、映画には2組の男女が登場します。

妻と離婚協議中のシモンは、妻の気をひくためにビラル達を家に泊めたんでしょうね。
最初の動機は不純ですが、次第に本気でビラルの身の上を案じるようになります。
何かをあきらめているように生きていたシモンが次第に変化していく様子を、
ヴァンサン・ランドンが上手く演じています。

一方のビラルはイギリスに移住した恋人に会いたい一心なんですが、
その恋人は、金持ちの従兄弟と結婚することを父親に決められてしまいます。
クルド人社会では、父親の意見は絶対といった感じなんですね。
映画「ベッカムに恋して」(2002年)で、パーミンダ・ナーグラ演じるインド人女子の家庭が、
イギリスに暮らしていながらもかなり封建的やなぁと感じたのを思い出しました。

恋愛映画としては同監督の「灯台守の恋」(2004年)の方がねっとり(?)してて印象的かな。
今作品は社会派映画の色合いがやはり濃いです。

そういえば、シモンの妻と一緒に不法滞在者に食事を配っていた人、どこかで見たなぁと思ったら
フランスのドラマ「スパイラル」のジル(刑事)役の人でした。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。